因子転生
とかげ
第1話
__________ つまんない。この安定した日常も、現実的な刺激も娯楽も、いつしか楽しくなくなった。だからこそ憧れてしまう、異世界転生やらヒーローやら非現実的な事を。自分がいつしか異世界転生しないかといつまでも待ち続ける....
「馬鹿馬鹿しい。」
もう、祈りはやめた。もう俺は高校三年生でそろそろ進学が控える時期なのだ。そろそろこの現実に向き合わなければならない、その苦痛をこの生涯味わなければいけないそう考えるとあっけない。これっぽっちの人生短歌。.....でも、現実をすべては否定していないつもりだ。みんなから注目されて、みんなから愛される存在になれる。....まあ、”奇跡”があれば、の話だ、どれだけキャリアを積もうともそれに到達するのは厳しい。実力も運の内。そんなのはうんこ野郎の戯言。
そんな俺、
「 かと~くん。全部聞こえてる。 」
「 ......ん 」
背後から何度も聞きなれた声を耳にする。......
「 でも
「 あきねーの? 」
「 気分であきるね。 」
「 ないのと同じじゃね。 」
こいつはなんで俺につるんでくるんだろう。幼馴染ってわけでもないし、何か恩があるわけでもない、ただつるんでくるだけ.....まあいいさそんな事を考えようが何かあるわけでもないし....それに悪い気はしない。俺は皆にちやほやされたいしこんな可愛い同級生がいつも話してくれるし。彼氏持ち.....ではないらしいが。唯一嫌いなところは俺より背丈が高いところ。173㎝あんのに相手は2㎝高い。勘弁してくれ...
「 じゃあねおちびちゃん。テストがんばれよ~。 」
「 ちびじゃねーし、平均以上だっての!! 」
「 へへん。私よりちっせーなら全員おちびちゃ~ん。ほら、はやくいこ!! 」
というと中原は俺の手を引っ張り俺を教室へと向かうのだった。中原の自分より大きい背を見ながらも...んー、こういうのは俺が相手を引っ張るんだけれどな....。まあいいさ。今日は4時間で帰れる…休み時間に中原を誘ってみるか。確かにこの世界は酷くつまらない。でも今はなんだか楽しくなってきた。テストは嫌だけど早めに帰れるならいっか。
「 それではテストを始めるぞー。加藤、中原のことが好きだからってカンニングしないようになー。 」
「 はあ!?嫌いですよこいつなんか!! 」
「 ええ~、悲しいなぁ.... 」
「 ちょ、噓やんって.... 」
クラスには笑いが溢れ、がやがやしていた。.....少しは緊張はほぐれたからいいかな。いや....その分恥をかいたからアレなんだけどさ......。
開始の合図がなると静かに書く音が鳴り響き、皆は集中している。中原はなんというか、まるで絵を描くように鉛筆を躍らせていた。こいつは何でもできんのか!と、此方はまあギリギリ合格範囲内であろう所まで書き進める。はあ、徹夜してたから眠くなってきた。.....まあ書き終わったし寝てもいいかな.....目を閉じて、今は寝る事にしよう....
________俺、何時間寝てたかな....いや、何時間も寝てない。多分もう少しで終わるかな。....あれ。なんか身体が軽い気がする。俺の知らない感覚を感じる。目を開けた瞬間、何故か路地裏に居た。さっきまで学校で寝てたはずなのに。....ゆっくりと立ち上がれば路地裏から出る。すると
「は.....???」
そこは人ではない...生き物やら植物やら。何かを模したような人間達が町中に。建物も近未来的で.....戸惑っているとふと自分の手が目に映る。明らかに俺の手ではない。そして身体の彼方此方を触っていると。
「 俺の....身体が..... 」
____カブトムシになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます