ゴミはゴミらしくゴミ拾いでもしてろ!不遇職【ジャンク屋】なんてゴミだと言われたが、【廃品回収】スキルが予想外の異空間チートだった。

anghel@あんころもち

序章

第1話

レイトは手にした、複数の古びたペンチと壊れた魔道具の刃を組み合わせたらしい、見た目がアンバランスなお手製ニコイチハサミもどきを構えた。

これは、彼がこのボスの見た目に対しロボットと言えば解体だろうと安易な考えのもと作られたアイテムだ。


「よし、まずは機動力あしだ。ロゼッタ、俺が合図したら、あの左脚の気持ち悪いパイプみたいな所を頼む! これで切り裂いてくれ!」


レイトの指示に、ロゼッタがボスの左脚に接近する。ボスがモーニングスターらしき腕を振りかぶった、その隙を突き、レイトが叫ぶ。


「今だ!!」


ロゼッタがジャンプし、ボスの左脚と胴体をつなぐ太くねじれて絡み合ったパイプのような筋肉にハサミもどきを突き立て、渾身の力で切断を試みる。

ハサミもどきはギシリと軋み、わずかにパイプを切り裂く。

しかし負荷のかかったハサミもどきはガキンッという音とともに要の部分が弾け飛んだ。


「チィ! 硬ぇし、ハサミもどきじゃ切れねぇか!」


完全に切断はできなかったが、数本の筋繊維が傷つき、ボスの体勢が崩れる。

ロゼッタはすぐさまハサミもどきを捨て、自身の刃で追撃を仕掛けようとするが、切り裂かれた有機質のパイプが瞬時に修復され、同時にボスの巨体が体勢を立て直す。


「ヴァ!」


体勢を戻したボスが気合のような機械音を発し、ロゼッタに対し容赦ないクローの一撃を放つ!


「ロゼッタァ!!」


レイトの叫びも間に合わず、ロゼッタはボスの圧倒的なパワーに弾き飛ばされ、広間の壁に激突した!


--------------------------


時は少し戻り、ダンジョンの最奥部。

分厚い岩盤で覆われた広間の中央で、巨大な鉄塊が咆哮を上げた。

遥か古の時代に造られたとされる、からくり仕掛けの番人、【アビス・ガーディアン】。

全身は、幾千年もの時を経て錆びついた古代鉄と堅牢な魔力岩の装甲、球体関節で構成され、それらをつなぐのはまるでねじれ絡みあった、有機質の太いパイプのような剥き出しの筋肉だ。


――今。この瞬間は、魔導通信網を通じて全世界に配信されている。


「さてさて、今週のスペシャルお掃除ターイム! 今回のお相手は、黒くてごっつい鉄くず! いやぁ、デカいですね!」


レイトは、手にしたスパナのような形状をした巨大なハンマーを軽々と構えながら、空間に浮かぶ小さなウィンドウに向かって話しかける。

それは、今や世界中で知らぬ者はいない、人気ダンジョン配信、『お掃除配信 ~異空間ジャンクマスターへの道~』の配信画面だ。


『キター!』

『レイトさん!ロゼッタちゃん!』

『きたああああああ!』

『待ってた!』

『ついにボス戦!』

『アビス・ガーディアン!マジか!』

『今日のおっさんレイトも絶好調か?』

『ロゼッタちゃん今日いつも以上に可愛い!』

『チャンネル登録者数やべえ!』

『同時接続カンストwww』

『これが伝説!』

『毎週楽しみ!』

『仕事放り出してきた!』

『コメント多すぎて追えねえw』

『スパチャ!頑張って!』


数えきれない、膨大すぎるほどのコメントが滝のように流れ続けている。

レイトの隣には、黒を基調としたメイド服に身を包んだ、人形のように整った顔立ちの美少女、ロゼッタが立つ。

普段の無表情さは鳴りを潜め、今は真剣な眼差しでボスを見据え、レイトの動きに合わせて淀みなく刃を振るう。

彼女こそ、レイトが【ニコイチ】スキルと無機物素材の合成強化で成長させた相棒だ。


「よし、まずは様子見と行きましょう! アビス・ガーディアンの装甲に、どれだけダメージが通るか!」


レイトは自慢の【ニコイチ】製ハンマーを担ぎ、ロゼッタと共にボスに突撃する。

アビス・ガーディアンがモーニングスターを振り下ろしてくるのを回避し、その巨体にレイトのハンマーが叩き込まれる。


ガァン!


甲高い金属音が響き渡る。ハンマーの一撃は確かにボスの装甲に食い込んだが、その程度では致命傷には程遠い。


「硬っ! やっぱりチート装甲は伊達じゃねぇな!」


ロゼッタも自身の刃でボスの装甲を切りつけるが、火花を散らすのみで深々と斬り込むことはできない。


『硬いな!さすがボス!』

『装甲貫通は難しそう』

『どこ狙うんだ?』

『弱点探しか!』

『レイトさんなら何か見つける!』

『ロゼッタちゃんカッコいい!』

『メイド服最高!』

『ロゼッタちゃんのパンツみえた!?』


直接装甲を叩いても効率が悪いと判断したレイトは、次なる手を打つ。


「よし、まずは機動力だ。ロゼッタ、俺が合図したら、あの左脚の気持ち悪いパイプみたいな所を頼む! これで切り刻んでくれ!」


レイトの指示に、ロゼッタが頷く。

ボスの攻撃を避けながら、ロゼッタがボスの左脚と胴体をつなぐ、血管のように脈打つ有機質のパイプに狙いを定める。

ロゼッタがボスの左脚に接近、ボスがモーニングスターらしき腕を振りかぶった、その隙を突き、レイトが叫ぶ。


「今だ!!」


ロゼッタがジャンプし、ボスの左脚と胴体をつなぐ太くねじれて絡み合ったパイプのような筋肉にハサミもどきを突き立て、渾身の力で切断を試みる。

ハサミもどきはギシリと軋み、わずかにパイプを切り裂く。

ロゼッタは何度もハサミもどきを動かし徐々に筋繊維を切り裂いていった。


「ラスト1本っ!」


レイトの掛け声とともに大きく刃を開くロゼッタ、しかし負荷のかかったハサミもどきはガキンッという音とともに要の部分が弾け飛んだ。


「よっしゃ! 結合部分あんよの切断成功!」


一瞬、ボスの体勢が崩れる。レイトは攻撃が通じたことに安堵するが、次の瞬間、信じられない光景を目にする。


切り裂かれた有機質のパイプの断面が、猛烈な勢いで蠢き始めたのだ! まるで生きているかのように、切断面から繊維が伸び、瞬く間に再び結合していく!


「……は?」


レイトは呆然とする。切断したはずの筋肉が、完全に元通りになっている。


「……う、嘘だろ!? 今、切ったばっかだぞ!?」


ロゼッタも、自身の攻撃が意味をなさなかったことに驚き、焦りを隠せないまま自身の持つ小太刀を構え追撃を行うべくボスの眼前へと躍り出る。


「ヴァッ!」


再生を終えたボスが、体勢を立て直すと同時にロゼッタに反撃! ロゼッタはなんとか直撃を避けるものの、ボスの圧倒的なパワーに弾き飛ばされ、広間の壁に激突した!


「ロゼッタァ!」


レイトが叫ぶ。ロゼッタはメイド服に土埃をつけながらも、すぐに立ち上がる。

「モウシワケゴザイマセン、ゴシュジンサマ」

かすかにカタコトに戻り、任務を果たせなかったことを悔やむロゼッタに、レイトは駆け寄る。


「いや、違う! ロゼッタは悪くねぇ! 俺が…! コイツ……コイツの本質は、デカさでもカタさでもねぇ、その再生能力タフさだ!」


血の気が引くレイト。このボスは、再生する! しかも、尋常じゃない速さで! 装甲が硬いだけでなく、傷つけてもすぐに治る。

これが、アビス・ガーディアンの本質! 再生能力を持つ結合組織きんにくこそが、その強さパワーの根源だったのだ。


『再生した!?』

『え?今切れたよね?』

『はやすぎる!』

『どうなってんだ!?』

『コイツまさか再生能力持ちかよ!』

『厄介すぎる…』

『ロゼッタちゃん!大丈夫か!?』

『壁ドン!』

『おっさん顔面蒼白www』

『これはヤバイぞ…』

『固くて太くてデカくて即復活…ブヒッ』

『どうやって倒すんだ?』

『詰んだんじゃ…』


コメント欄が騒然となる。


再生能力に気づいたレイトは、打開策を見つけようと試行錯誤を始める。


「くそ! 切ってもすぐ治るなら、他の手だ! ロゼッタ、あの筋肉に集中攻撃だ! 治るより早くダメージを与え続ければ…!」


レイトとロゼッタは再生した結合組織に集中攻撃を仕掛ける。

レイトがハンマーで叩き潰せばゴムのように弾きながら再生し、ロゼッタが連続で斬撃を浴びせ切り離したパーツを蹴飛ばせば結合組織が伸張し絡み合い引き戻す。

確かにダメージは入るが、その傍から再生が追いついてくる。


「駄目だ! ダメージは入るけど、再生が早すぎる!」


『やっぱり物理じゃ無理か?』

『魔法なら効く?』

『いや、再生されるだろ』

『そも、古代鉄に魔法は効かない』

『どうすんだこれ…』

『諦めるのか?』

『レイトさんなら何かあるはず!』

『変なアイテム使うしかない!』

『ニコイチしかない!』


コメント欄でも打開策を巡って議論が巻き起こる。


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