『呪文名:ココロオドル』

「ココロオドル1:この呪文は、相手の『魂』の善悪を判定して裁くことができるんだミュ。

失敗すると、きみの約16日分の生命力を削るけど…。

まあ、魔法少女に多少の犠牲はつきものなんだミュ」


見たこともない生命体が、なんか好き勝手に言っている。

道端に落ちていた、ステッキを拾ったのがいけなかった。

小さな子どもが喜びそうな、きらびやかな装飾が施されているもんだから。

妹に見せたら喜ぶかな、なんて思ってしまったんだ。



「ココロオドル2:この呪文は、『時間』を2AWP/だけ進めてくれるんだミュ。

対価に、きみのこれからの行動すべてに不運が作用してくるけど…。

魔法少女に選ばれた時点で、世界の不幸を担うのだから、些末なものなんだミュ」


未確認畜生が、なんかわけのわからない単位みたいな言葉も交えてのたもう。

これ見よがしに、落ちていたステッキだった。

それこそが、そもそもの罠だったのかもしれない。



「ココロオドル3:この呪文は、『愛』を05倍だけ強くーーー」


まだ続きそうな理解できない説明を、挙手で遮る。

「魔法少女自体を辞退する呪文はあるの?」と。



「あるミュ。その呪文のせいで僕らの世界では、深刻な魔法少女不足に陥っているんだミュ。

『リリカル』なんて簡単な呪文じゃなくて、もっと難解で言葉で表しくいものに変えるべきだミュ」



私は間髪いれずに唱える、「リリカル」と。

その瞬間、目の前から不条理を言い渡してくる物体Xは消え、ついでにステッキもなくなった。



やれやれ、ひどい目に合うところだった。

これで、魔法少女にならずにすんだのだ。

なんだかんだ言って、普通の人間が一番いいんだから。


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