第5話:おっさん、手作りおやつで爆発寸前
朝のキッチンから、香ばしいような、焦げくさいような、何とも言えない匂いが漂ってきた。
俺は鼻をひくつかせながらリビングから顔を出す。
「なあ……またやっとるんか?」
「ふふっ。今日はミントのために、手作りササミジャーキーや!」
おっさんは、オーブンの前でどや顔を決めていた。
いや、それ、普通のクッキングじゃない。
ジャーキー作りながら、謎にラップ調のリズム刻んでるし。
「俺の名は〜おっさん、料理はナ〜ンバーワ〜ン♪」
「黙れ。キッチンに立つたびに事件が起こるくせに」
「今日のレシピはYouTubeで見た通りやで。ササミを薄く切って、味付けせずに低温でじっくり……」
「じっくりって、なにその温度?250度って書いてあるぞ」
「いや、それは多分アメリカのやつや。華氏と摂氏の違いやろ?」
「訳してからやれや!」
ちょうどそのとき、オーブンの中からバチッと火花が弾けた。
「うおっ!?なに!?燃えた!?」
「ササミちゃう。アルミホイル焦がしてんぞ!」
「え!?これアルミ使っちゃアカンやつ!?」
「わからんくせに試すなや!料理は実験やない!」
慌ててオーブンを止めたおっさんが、くすぶるホイルごと天板を取り出した。
見た目は……茶色を通り越して黒。
もはや「炭」。
「……これ、ジャーキーってより、兵器?」
「やっぱな、火力って正義やと思ったんやけどな……」
「その考え方、料理に持ち込むな」
ふと、テーブルの上に置かれた謎のスナックが目に入る。
さっき焼いたらしい。
「これ、もしかして第一弾か?」
「うん。ちょっと焦げてるけど、愛情は詰まってるで」
俺は一応くんくん匂いを嗅いだが、鼻が「やめとけ」と言っていた。
「愛情ってな、見た目と味で測るもんやからな」
「じゃあ……残す?」
「保存しとけ。炭として。防災グッズとしてな」
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