第2話 「よっし、冒険者ギルド発見!紅葉っち、やるじゃん!」
元の世界で異世界系のラノベを少しだけ読んだことがある紅葉は、町の中を歩きながらふと足を止めて呟いた。
「なあ彩織。こういう時ってさ、やっぱ“冒険者ギルド”ってやつを探した方がいいんじゃねえの? ほら、金も必要だし……せっかく異世界に来たんだし、それっぽいことしてみたくね?」
目を輝かせていた七川彩織は、その言葉に食いつくように笑顔を弾けさせた。
「紅葉っち、それマジ名案じゃん! ウチらもついに冒険者デビューってやつじゃん! やば、超テンアゲ〜!」
その勢いに紅葉も苦笑しつつ、やや現実的な視点を忘れずに指摘する。
「いや、まだだっての。たぶん適性検査とかあるだろうし、いきなり戦ったりするのは無理だろ? そもそも冒険者って、わりと命がけなんじゃねえの?」
彩織はニッと笑ってサムズアップを突き出すと、まるで根拠のない自信に満ちた声で答えた。
「なーに、大丈夫っしょ! とりまギルド行って、話聞くだけ聞いてみようよ! あとは流れで!」
勢いに押されつつも、紅葉もまんざらではなさそうに頷いた。二人は再び歩き出し、町の人々に声をかけながらギルドの場所を尋ねた。住人たちは見た目も話し方も異国風だったが、なぜか言葉は理解できた。不思議な翻訳魔法でもかかっているのだろうか。何人かの親切な住人に教えられ、ギルドの建物にたどり着いた。
それは小さな石造りの建物で、扉の上には装飾の施された大きな木製の看板が掛かっており、見慣れぬ文字列とともに、どこかで見たようなフォントで「冒険者ギルド」と書かれていた……ような気がする。
「おっ、あったじゃん! さすが紅葉っち、やっぱ持ってるわ〜!」
彩織が満面の笑みで言うと、紅葉は少し照れたように鼻をこすった。
「まあな……でも、ここからが本番だろ?あたしたち、本当に冒険者になれんのかね?」
緊張と期待が入り混じった面持ちで、二人は重厚な木の扉を開けた。中に入ると、木製の床には無骨なテーブルや椅子が並び、数人の屈強な男たちが談笑していた。その筋骨隆々な体格に、思わず彩織は小声で呟いた。
「うっわ〜、本物のムキムキマッチョじゃん……なんか感動〜……」
紅葉も同じように彼らに視線を向け、「ああ……なんか、なんたらファンタジーにいそうな連中だな。なんなら格ゲーでも通用するぜ。」と、若干引き気味で返した。
しかし、冒険者たちは彩織たちに一瞥をくれたきり、特に詮索することもなく会話に戻り、やがて装備を整えて外へと出ていった。どうやらこの世界では、見慣れぬ風貌の者が現れても、いちいち騒がれることはないらしい。
カウンターの奥にいた受付嬢が、二人に気づくとやわらかな笑みで迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。こちらは冒険者ギルドです。本日はどのようなご用件でしょうか?」
紅葉は少し緊張した様子で彩織と目を合わせ、覚悟を決めたように前へ出る。
「あたしら、冒険者になりたいんだけど……その、登録とか、どうすればいい?」
受付嬢は慣れている様子で優しく頷き、手元の書類に何かを書き込むと、二人をカウンターへと案内した。
「かしこまりました。まずは適性検査を受けていただきます。その結果に応じて、皆さんに合ったジョブを選んでいただきます。身体能力の測定や、魔力の有無の確認がありますが、問題ありませんか?」
彩織は目を輝かせながら身を乗り出した。
「全然OKです! むしろワクワクしてきた〜。で、その検査って何やるんですか?」
「はい、まずは簡単な運動能力テストと、魔力反応を見るための測定石への接触。ご希望のジョブによってはいくつかの質問。その結果を参考に、戦士系・魔法系・技術系など、適正ジョブを判断いたします。」
受付嬢の丁寧な説明に、二人は大きく頷いた。しかし、紅葉は少しだけ不安そうに眉をひそめる。
「魔力の有無、か……そんなの、自分にあるかどうか分かるもんなのか?」
彩織はニカッと笑い、勢いよく背中を叩く。
「試してみりゃいいじゃん! もし魔法使えたら、超カッコよくない? あたし、できれば光魔法とか炎とか使いたいな〜。」
紅葉はやれやれと肩をすくめつつも、心のどこかで「もし本当に魔法が使えたら……」という淡い期待が膨らんでいくのを感じていた。
こうして、異世界にやってきたばかりの彩織と紅葉は、冒険者になるための第一歩を踏み出すことになった。手探りながらも、二人の目には希望と興奮が満ちていた。
果たして、彼女たちはどんなジョブに適性があるのか。そしてこの異世界で、どんな物語が彼女たちを待ち受けているのか──その扉が、今まさに開かれようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます