第9話
ふたり
「ね、タケゾウさん。アタシね、元の世界では「剣道」をしてたのよ。 学校のクラブ活動でね。 ていっても、タイムスリップしたその日が初めて「剣道着」を着た、ぜんぜん新米のド素人で、イロハも知らない。せっかく日本一の剣豪と遭遇できて、縁ができて、お手合わせしないのももったいなく思えてきて…剣道の試合をしてもらえませんか?」
「ほ~なぜ黙っていた? アレは剣道とやらの胴着やったんか、ただのファッションかと思っておったわ。町娘の衣装を調達してあげたけど、あの胴着もなんだか凛々しい風情で似合っておるよな! まあ聖子殿は美少女やから、何を着てもチャーミングやけど。 ワハハハ」
タケゾウさんはまた得意の?英語で褒めてくれて、また思わずアタシは赤面した。
… …
深山幽谷で天涯孤独…そういう厳しい条件で、あえて自分を鍛えてるんだ、ってタケゾウさんは言ってて、だけどやっぱり口八丁手八丁な精力的な若者だから、いつも訓練している「道場」も、なんだか使い勝手のいいように工夫してあれこれしつらえてあって、近代的なスポーツジムを彷彿させる趣きだった。
フィールドアスレチックによくあるみたいな平衡感覚とか瞬発力を鍛えるカラクリとか、単純に膂力を底上げするらしい道具、藁人形もあるし、弓道の的もあった。 狩りには弓を精密に射かけるコントロールも必要…いかにも合理的に、スマートに全体が設計されているのが分かる、訓練場でした。
そこで、
「頼もう!」
「お願いします!」
…アタシは、剣道部に入ると決めてから、いろいろ参考書を読み漁ったので、いわば「ペーパー剣士」で、免許皆伝のはるか手前の仮・仮免許?くらいです。
日本一の剣豪が、正眼の構えでこちらをぐっとにらんだ時には、さすがに鳥肌が立ってちょっとぞわ~と震えました
<続く>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます