第7話
アタシは、剣持聖子といって、16歳のJK…やってんけど、ひょんなことでタイムスリップして、戦国時代に来ちゃった!
その日は、新しい剣道着を着てはしゃいでいて、下校時も着てたんやけど? その時に交通事故! で、誰かが天国に召されかけたアタシを、救出して、運命のお師匠さんの?宮本武蔵のところに運んできてくれた!
最近流行りらしいフォーマットを踏襲して、ウケ狙いが見え見えw
ですが、宮本武蔵さんは、予想にたがわぬ、武骨だけど優しくて、全身からサムライらしさがひしひしと滲み出ている、本物の”オトコ”、雄、漢でした。
私は一目惚れして、すぐに弟子入りを申し入れて…鷹揚に許されました。
師弟というよりも、ハネムーンのカップルみたいなんやけど、こんなに胸がときめく男性には、もう出会えない! 絶対! あたしはそう確信して、ムサシさんに、命も預けようと決心したんです!
死なばもろとも! 剣の道に一路邁進している彼の邪魔になったら悪いという危懼も多少ありましたが、身の回りの世話をする人も、当面必要らしい…「出ていけ! 破門だ!」と、三下り半を突き付けられるまでついていく! 武蔵さんは文盲じゃないから三下り半は必要ないけどね?
…うららかな、平和な晩春の夕刻。
二人で夕餉の宅に向かい合っていた。
アマゴの塩焼きとなめこの味噌汁。シカ肉のたたきもあって、それなりに豪華な献立でした…
「ねえ、武蔵さんは、これからどうしていくかの青写真はあるの?」
「アオジャシン?」
「だいたいの今後の計画よ。 いつまでもこんなところで猟師みたいな暮らしはできないでしょ」
「素浪人、牢人とも書きますが、今は野武士で食い扶持もなくて、ただの浮き草稼業やが、定期的に、ほうぼうの大名に士官を請いには行っておるよ」
「私らの歴史では、武蔵は、関ヶ原の戦いで手柄を挙げたりして、有名ではあったけど、出世はしなくて、生涯ひたすら剣術の求道者だったイメージがありますけどね」
「まあ、オレも今はそういう未来へのビジョンしか持っていないけどな。 やっぱそうなったか。 ワハハハハ」
稀代の剣豪・伝説の剣士は豪快に笑いました。
豪放磊落で、素敵だけど…将来をいきなり知らされて笑ってるなんて…カレ、わりと脳天気なんかな?
「でも、未来を知って…怖くない? がっかりしちゃった? 」
「いやあ、未来は自分で創造していくもので…オレも伊達に修行を積んではいない。 嘘だかなんだかあやふやな、雲をつかむような話に惑わされはしないよ。 聖子どのに疑義を持つわけでないが、なんだかおぬしの言うように時間というものが、なんだか唯一絶対の流れでないとすると、どんどんと歴史も変わっていくのかもしれないよ」
さすが! この男はやっぱりバカではない! アタシは麦飯を掻き込んでいる乞食侍の垢じみた横顔をほれぼれと眺めるのでした…
<続く>
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