第22話 防犯カメラ(閑話)

 これは金銀魚の養殖場を作っている時の少し前のお話。



 ゴンは考えていた……


 最近になって肉串屋台の秘伝のタレが盗難されたのだ。やった相手は分かっていたが取り敢えずゴンはそのまま放置していた。


 何故ならば再現が不可能だからだ。この秘伝のタレは醤油が無ければ作れない。実際に屋台の者にもゴンから醤油を売って作って貰っている。


 継ぎ足し継ぎ足しで味が深くなっていたので惜しいとは思ったが、また一からやって行けば良いだけだ。


 しかし毎回毎回このような事が起きるのは困る。そこでゴンは防犯カメラを作る事に決めた。先ずはナーノと一緒にゴミ捨て倉庫に行く。


 ナーノにゴンは防犯カメラを手渡して何が必要なのかを確認する。


「うんっとね、ゴン。コレとコレとアレとアレがいるよ」


 ナーノの返事にゴンはゴミ捨て倉庫の中を駆け巡りそれらを集めてきた。


「うん。コレで出来ると思うよゴン」


 その言葉通りにナーノは十分でカメラを作ってくれた。

 ならばとゴンは隠しカメラタイプも手渡してまた素材を集めて作ってもらう。


 けれどもそれを裁判などの証拠に使う為には偉い人から認めて貰う必要がある。なのでゴンはナーノに作って貰ったカメラを領主であるダイ・ミョージンに手紙と共に贈った。使用方法もちゃんと記載してある。


 後日、ダイ・ミョージンからコレは本物だとのお墨付きを貰い、また今後はこのカメラで撮った映像は証拠として通用するように法律を作るとの返事をもらえた。


 それから一ヶ月後に本当に領主であるダイからミョージンジャとシンイキで防犯カメラという新たな裁判での確定的な証拠となりうる物が出来たと発表された。


 そしてその防犯カメラはゴンのテキ屋組織の中で日常で売れる物をと作られた雑貨店にて販売される予定である事も発表されたのだ。


 ゴンは事前に聞いていたのでナーノや他の加工師たちに頼んで防犯カメラの量産をしていた。

 ダイから発表があった時には在庫台数は百台にしてあったのだが……


 売れに売れた為に在庫が直ぐに無くなってしまった。というのも普段の商店だけじゃなく、畜産農家などにも売れて、また価格が性能によって違うのだが最低価格の物が銅貨八枚(八千円)。最高価格の物が銀貨二枚(二万円)である。普通のお店だけじゃなくて少し裕福な家庭でも購入してくれたので直ぐに在庫分だけでは足りなくなってしまった。


 また最高価格の物は何と領主であるダイから二十台の注文がきたので慌てて足りない分を慌ててナーノに作って貰ったほどだ。


 そして他の領地からの注文も入るようになってきた。そこでゴンは新たに加工師を募集して面接を行い、防犯カメラ専用の職場を作った。何時までもナーノやこれまでのテキ屋組織の加工師に作らせていたらテキ屋用の機械の製作に支障をきたすからだ。


 初めはナーノや他の加工師の指導が必要だったが一カ月で新たに雇った加工師たちも自分で防犯カメラを製作出来るようになってくれたので、ヒックを総責任者に任命して防犯カメラに専念してもらう事を決めた。それでも休日にはテキ屋の方を手伝ってくれるヒックにはちゃんと休みを取ってよとゴンは命令しなければならないほどであったが……


 こうして防犯カメラが各地に普及していったのだ。


 そして秘伝のタレの盗難も犯人が特定されて東地区屋台組織からの依頼だという事も確認されたのだが、残念ながらそちらについては完璧に書類などの証拠が処分されていて、証言だけでは有罪と認められずに屋台組織はお咎めなしとなった。


 しかしいずれは東地区屋台組織もボロを出す筈だとゴンは各屋台を保管してある場所の警備を強化して、対策に乗り出したのであった。



 金銀魚の養殖場については後手に回ってしまったゴンであったがそれでも防犯カメラの映像があるので今度こそは東地区屋台組織に大打撃を与える事が出来るとゴンは錦魚きんぎょを見ながら思い、防犯カメラを作った経緯を思い出していた。


 決戦の時である豊穣祭はもう明後日となっていた。ここで錦魚すくいで売上でも大打撃を与えて一気に潰すつもりであるゴン。


「うちの職員や罪もない金銀魚を傷つけた事を絶対に後悔させてやる。売られた喧嘩は買ってやるし、ボロボロにしてやるからなっ!!」


 ゴンは決意を口にして気合を入れたのであった……


 

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邪神から世界を救って欲しい? 日本の縁日があれば世界は平和だ!! しょうわな人 @Chou03

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