第2話 転職

 とりあえず今いるのはB級ダンジョン『スケルトン海岸』だ。朽ちた海賊船が座礁したその海岸にはスケルトンが主な敵として出没する。正直ノービスレベル50でよく挑んだものだ。


 ダンジョンにはSABCDEFの七段階のランクがある。その上から三つ目のB級ダンジョンをソロで進めていたのだ。才能はある。だが、転職していないのが気がかりだ。


 ノービスLv.50

 スキル

『応急処置』『リカバリー』『探知』『火事場』

 転職可能

『魔法使い見習い』『剣士見習い』『弓使い見習い』『槍使い見習い』『拳闘士見習い』『盾使い見習い』『精霊使い見習い』『テイマー見習い』


 やはりノービスは基礎職業なだけあって、転職可能な職業が多い!

 だが、俺はもう決めている。


「転職! 魔法使い見習い!」


 正直、病み上がりで体を上手く扱えない今、遠距離の魔法使いが最適だと思う。それに魔法にはロマンがあるからな!


 転職はレベル上限に至り、脳裏で強く願えば転職できる。なぜスベルトは転職していなかったのだろうか。その答えは彼の記憶の中にあった。この世界には転職という概念がない。そもそも認知すらされていないのだ。稀に上位職に職業が変わったという事例があるが、それは都市伝説の類だ。


 つまり、この世界で俺は最強になれる……のか?


 魔法使い見習いに転職してもノービスのステータスは引き継がれる。つまりノービスこそが最強になれる職業なのだが……。これは、楽しみがいがありそうだ!



 とりあえずB級ダンジョン『スケルトン海岸』を攻略しようか。



 魔法使い見習いLv.0

 スキル

『応急処置』『リカバリー』『探知』『火事場』『プチファイア』

 転職可能

 なし


 レベル0になったが、ステータスは引き継がれる。魔法使い見習いになったことで火系初級魔法の『プチファイア』を習得した。


 海岸を進むと早速スケルトンが出現した。


 俺は『プチファイア』を唱えてみる。


「『プチファイア』!」


 放出系魔法はエフェクトが小さいほど威力がある。ノービスのINT(知力)を引き継いだ魔法はそこそこの威力でスケルトンへと飛んでいった。するとスケルトンは粉微塵になって倒れた。


 少し安堵する。魔法が効かなかったら腰にある剣で戦わなければならなかった。スベルトの記憶があるから、多少は動くのに自信があるが、前世で寝たきりだったこともあり、体を動かすことに抵抗がある。


 そのまま魔法でスケルトンを倒して進む。ボス部屋の海賊船に辿り着く。レベル10になって魔法『プチウォーターウォール』を習得した。これは防御魔法だ。


 魔法使い見習い

 レベル0『プチファイア』攻撃

 レベル10『プチウォーターウォール』防御

 レベル25『プチウィンドカッター』攻撃

 レベル50『プチアイスウォール』防御

 レベル100『プチサンダー』攻撃


 ざっとこんな感じ。

 防御と攻撃魔法の両方があるのがデカい。


 キングスケルトンはスケルトンメイジ二体を引き連れている。スケルトンメイジは魔法を使ってくる。


 俺は、真っ先にスケルトンメイジに目掛けて『プチファイア』を唱える。一体が倒れるが、もう一体が魔法を唱える。その刹那、俺は『プチウォーターウォール』をスケルトンメイジの目の前に放つ。するとスケルトンメイジの放った『ファイア』が『プチウォーターウォール』に吸収されていき、爆発した。水蒸気爆発だ。その爆発の威力はものすごく、スケルトンキングにも被弾した。こういう魔法の使い方はゲームにはなかったな。


 俺は畳み掛ける。


「『プチファイア』! 『プチファイア』! 『プチファイア』!」



 プチファイアの連撃はスケルトンキングを倒した。


 レベルは13。まぁいいだろう。スケルトンキングの残骸から宝箱が出現する。中身はゴールドバングルだった。防御力+50、体力+150の優れもの。当たりだ。だが、俺の欲しいのはミスリルバングルだった。取得経験値倍化のミスリルバングルはどうしても欲しい。


 青白く輝く帰還ゲートに向かって歩みだす。正直ちょっと怖かったが、目を開けるとダンジョンの入り口にいた。


「戻ってきたのか……」


 ダンジョンの受付にいる受付嬢に話しかける。確かアイリーさん。


「アイリーさん。こんにちは」

「あ、あなたはスベルトさんですか!」


 受付嬢の娘が大きな声を出し泣き始める。おいおいどうしたんだよ。


「もう三日も帰らなくて、てっきり死んでしまったのかと思ってました……。生きてて本当に良かったです」


 スベルトは愛されていたんだな。俺はアイリーさんに向かって告げる。


「アイリーさん。念願のB級ダンジョンクリアだ。メダルをくれ」

「は、はい! 今渡しますね!」


 一つ上のランクのダンジョンに挑むには、その一つ下のランクのダンジョン三つを攻略する必要がある。俺、スベルトはこれで最初のB級ダンジョン攻略になる。あと二つ、B級ダンジョンに挑まなくてはならない。


「はい、どうぞ」


 アイリーさんから攻略の証となるメダルを受け取る。


「ありがとう。俺はしばらく旅に出る。当初の目標だった『スケルトン海岸』の攻略もできた」

「では次はどちらへ?」

「決まっている。ダンジョン都市ヘブンスだ」


 ダンジョン都市ヘブンスにはB級ダンジョンが二つある。A級ダンジョンは一つだが、S級ダンジョンも一つある。レベル上げには大量の経験値が必要だ。そのためには高ランクのダンジョンに挑むしかない。


 俺はダンジョン都市ヘブンスへと向かう決心をするのだった。

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ゲーム転生『異世界転生したらおっさんだった件について』 空花凪紗~永劫涅槃=虚空の先へ~ @Arkasha

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