第6話 少し雨に打たれて

「ちょっと濡れたね。ライア、大丈夫?」

 ぱらつく雨の中、学園に戻ってきたミコト達。学園の玄関でライアの髪についた雨粒を手で払い、服についた雨粒も軽く払う。その隣でシアも服についた雨を落として、ふと辺りを見る。雨宿りをする生徒達が、更に雲行きが怪しくなっていく空を見つめ、どうしようかと困った顔をしている

「ライアに合う服あるかなぁ」

 ミコトも濡れたライアの服を見て困ったように呟くと、ライアも自分の服をキョロキョロと見渡した

「ミコトが昔着ていた服がまだクローゼットにあるよ」

「えー、捨ててなかったんだ」

「カメリア先生に置いておくように言われて、そのままにしてある」

「そうなんだ。じゃあ早く寮に戻って着替えよっか」

 二人が話している間、貰ったクッキーを見つめていたライアの手をつかんで、学園よりも少し先にある寮の方へと向かっていった






「あの子達の様子はどう?」

 自室で仕事をしていたカメリアにアルトが訪ね問いかける。声を聞いたカメリアぎ少し顔を上げアルトの顔を見るとフフッと微笑む

「そうね、良くも悪くもという感じかしら」

 返事をしながらペンを進めるカメリア。それを聞いてアルトが困ったようにふぅ。と一つため息をつく。二人の間に一瞬、沈黙が流れるとそれをかき消すように部屋の扉をコンコンと叩く音と同時に扉が開き、女生徒が一人入ってきた。部屋にいるカメリアとアルトを見て驚いて一瞬後退りをした

「えーっと……。カメリア先生、ミコトとシアの部屋と一緒で大丈夫だそうです」

「あらそう、わざわざありがとう」

「はい。では失礼します」

 カメリアに返事をしてペコリと頭を下げてすぐ部屋を出た女生徒。バタバタと急いで帰る足音が遠退くと、アルトが困ったように笑った

「よく許可が出たわね」

「可愛い子猫は外に放つわけにはいかないからね」

 そう返事をすると机に置かれた本を閉じ、近くにある窓を見る。数粒の雨が窓についているのが見えて、座っていた椅子からゆっくりと立ち上がった

「片付けも終えたし、そろそろ私達も嵐がくるが前に帰りましょうか」

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