第4話 ぎゅっと手をつないだら

「ここが食堂だよ。ご飯がとても美味しいんだよ」

 一階にある食堂に着くと、ライアに説明しながらガラガラと扉を横に引いて開ける。いつもは騒がしい食堂が誰一人もおらず静かな食堂にミコトが不思議そうに中にはいる

「……あれ?なんで?」

「今は夕ご飯の時間じゃないから、誰もいないしご飯もないよ」

「えー、知っていたなら先に言ってよ」

「そんな暇なかったでしょ」

 そうシアが言い返すと、ミコトがしょんぼりと少しうつ向く。二人が話している間にライアも食堂の中に入り、椅子やテーブルを見渡したりして中を歩き回る

「ちょっとお出掛けして、町でご飯でも食べに行く?」

「良い案だけど、雨降りそうだから外は駄目だよ」

「うーん、じゃあ……」

 と、二人が入り口付近で話をしていると、一通り食堂の中を見渡し歩いてきたライアが二人のもとに戻ってきて、二人の顔を見上げた

「あの……」

「そういえば、ライアのお家はどこ?」

 声をかけたライアの言葉を遮り、少し屈んで目線を合わせて問いかけるミコト。急に聞かれて、返事が上手くできず、じっとミコトの顔を見る

「家族はいるの?どこにお家ある?」

 ニコリと微笑み問いかけ直すと、ライアがゆっくりと顔を横に振る。それを見て、ミコトがふぅ。とため息をついて、隣にいるシアを見た

「落ちた衝撃で忘れたのかな?」

「保護の魔術に失敗したのかもね。それなら忘れたのも一時的だよ」

「そっか……」

 ライアが二人の会話を聞いていると、ぐぅ。とお腹の音が鳴った

「雨降るけれど、ちょっと街に出て何かご飯買いに行く?」

「そうだね、仕方ないか」

「ライア、行こう」

 そう言うとミコトがライアに手を差し出す。そーっと差し出された手に触れると、ミコトがぎゅっと強く手をつかんでまたバタバタと騒がしく三人走り出した



「フルール、もう戻ってきたんですか?」

 ミコト達が食堂から出てすぐ、フルールが学園の一室にいたカナリヤの元に戻ってきた。カナリヤの側にある机の上に止まると、ゆっくりと首を左右に動かした

「そうですか……。それは困りますね」

 フルールの動きを見てカメリアがそう呟くとフルールがバサリと大きく翼を広げ、カナリヤが部屋の窓を開け、フルールがその窓から外に出た

「悪いけれど引き続き見守っていてください」

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