第3話 下級冒険者爆誕!
「おっと、自己紹介が遅れたな。オレの名前はガルシアだ。鮮血の両斧とはオレの事よ」
鮮血の両斧ってカッコいい二つ名ついてるじゃないか。
俺もそういうの欲しいぞ。
ガタイのいいおっさん、もといガルシアは同じテーブルに座っていた仲間に手招きすると二人がこちらへと歩いてきた。
「こいつらはオレの仲間だ」
「パイクだ」
「オイラはザガン。よろしくな」
バイクは細身だが自分の背丈以上の長槍を背負っている。
ザガンは逆に俺より背が低いが俺より大きなハンマーを背負っていた。
それ後ろに転けないのかなとは思ったが口には出さない。
「夜葉杉丸だ、よろしく」
「ふむ、略してヨワマルだな」
「よろしくなヨワマル!」
くっそダセェあだ名つけんな。
弱そうどころか、そのまんまじゃねぇか。
「それでヨワマルはここで登録するんだって?」
マールが興味深そうに聞いてくる。
まあ聞こえてたよな。
ガルシアの声大きかったし。
というか他のテーブルについている冒険者らも俺達を興味深そうに見ていた。
「まあ身分証明できる物が何も無いからさ」
「身分証明書がない?ヨワマル、何処から来たんだ?」
それを聞かれちゃあ困るな。
言っても信じてもらえないし。
さてどう答えるべきかと考えているとディーナさんが助け舟を出してくれた。
「コイツは幻惑の大草原で無防備にウロチョロしていた。恐らく何らかの魔法で転移したのではないかと考えている」
「何!?そうなのかヨワマル!」
「ヨワマルはどこの国から来たんだ!」
ヨワマルヨワマル連呼すんな。
どんどん弱くなっていきそうじゃないか。
「日本ってとこですけど、知らないですよね」
「聞いたことないな……パイクは知ってるか?」
パイクも首を横に振る。
知ってたらこっちがビックリだよ。
「弱そうな見た目の謎の男か。なかなか面白そうな経歴を持つじゃないかヨワマル」
弱そうな見た目ってのは余計だけど、確かにこの世界の人からしたら面白そうな経歴だよな。
何しろ幻惑の大草原はソロで攻略するような場所じゃないって話だし。
「マル、早く受付に行くぞ」
話しすぎたのかディーナさんが苛ついた様子で登録を促してきた。
俺はガルシア達に断りを入れさっさと受付へと急ぐ。
「パスィーユ冒険者ギルドへようこそ!本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付嬢のテンプレ台詞を聞き俺は用件を口にする。
というかこの受付嬢もさっきガルシア達と会話していたのを聞いていただろうに。
マニュアル通りにやらないと駄目なのかな。
「冒険者登録ですね。登録には一銀貨かかりますがよろしいでしょうか?」
「そのお金は私が出す」
えっ、太っ腹ー。
流石ディーナさん。
カッコ良すぎるぜ。
「はい、丁度一銀貨頂きました。では説明させて頂きます。冒険者には適正ランクに合った依頼しか受ける事ができません。当然失敗すれば違約金が発生しますのでご注意下さい。詳しいお話はそちらの鉄仮面さんに聞いて頂ければ良いかと思います」
ああ、受付のお姉さん途中で説明が面倒臭くなったな?
ディーナさんに全て振ったぞ。
まあ俺はさっさと登録を済ませて欲しかったからいいけど。
「大体の話はしている。後は問題ないな?私はこの後行かねばならんところがある。また会おうマル」
「えっ?」
待って待って。
説明は?
何もなし?
こんな所で放り出されたら俺はどうしたらいいんだよ!
「大して話す事はない。冒険者は死なずに依頼を達成すればいいだけだ」
「ま、まあそうですけど、なんかないんですか?これは覚えておかないと駄目、みたいな」
「ない。強いて言えばソロは辞めておけ。お前程弱ければすぐに死ぬ」
やるわけないだろ。
こと戦闘においては何の役にも立たないんだぞ!
自慢じゃないけど。
「また会えますかね?」
「確実にな。私はここパスィーユを拠点にしている。次に会う時には最低限ゴブリンを倒せるくらいになっているのを楽しみにしているぞ」
「が、頑張ります……。では、お世話になりました」
ディーナさんは後ろを振り向かず軽く手を挙げるとギルドから出て行った。
結構時間がおしてたのかもしれないな。
悪いことをした。
次に会った時用にお礼を考えておこう。
俺はもう少し一緒にいられるのかと思ってたけど、ランクの高い冒険だから忙しいんだろうな。
「ああ、行ってしまわれましたね。さて、登録の続きをしましょう」
その後は淡々と登録手続きを済ませていく。
「最後になりましたがこちらのプレートに血を一滴垂らして名前を言って下さい」
「夜葉杉丸」
「え?弱すぎ雑魚乙?」
言葉変わってんじゃねぇか。
コイツ喧嘩売ってんのかと思ったわ。
美人な癖して口悪いな……。
「いや、ヨハスギマルです」
「ああ、申し訳ございません」
全然申し訳なく思ってない顔で受付嬢が手続きを済ませていく。
血を垂らしたプレートが冒険ギルドの身分証明になるらしく、絶対に無くさないようにと厳命された。
「これで登録完了となります。下級冒険者からスタートですので頑張って先程いらした鉄仮面さんのような冒険者を目指してください」
「分かりました。目標がだいぶ高いですけどね」
「鉄仮面さんはこのギルドでもトップクラスの実力者ですよ。そんな方が連れてきた人はどんな人なのだろうと思っていましたが案外普通ですね」
それは思っても言わないのが普通じゃないかな?
俺どんな反応したらいいかわかんないよ。
「それとこちらを」
最後に受付嬢から渡されたのは大きな袋だ。
中には色々入ってるみたいだな。
「こちらは新人冒険者には必ず配っている初期装備一式です」
「ええ!?そうなんですか!めちゃめちゃ福利厚生しっかりしてんなぁ」
「フクリコウセイ?というのが何か分かりませんが、そちらには革の装備一式と包帯キット、後は初心者ガイドブックが入っています」
革装備は大体最初に手に入れる装備だよな。
手当用のキットも入ってるし、至れり尽くせりじゃないか。
「初心者ガイドブックは必ず目を通しておいてください。そちらには詳細なイラストも載っているので薬草採集などで役立ちますよ」
「へぇ、それはいいね」
「それと最初に受けなければならない依頼があります。準備ができたらまたこちらにいらして下さい」
受付嬢の案内で更衣室へと入ると、先程貰った装備を身に着けた。
鏡で自分の姿を映すと驚くほど弱そうな見た目で笑いそうになる。
「鉄のナイフが唯一の武器か。武器って言っていいのか分からんが。まあでも革の装備があるだけマシだな」
思っていたよりちゃんとした装備で石を投げつけられた程度なら防げそうだった。
ポーションとかは入ってないみたいだ。
あるのは包帯と布切れだけか。
まあないよりはマシだな。
着替えを済ませ俺は再度受付へと赴く。
「ああマルさんよくお似合いですよ」
「それは褒めてるのか貶してるのかどっち……?」
「褒めています」
疑心暗鬼になっちまうよな。
弱すぎ雑魚なんて言われてるから。
「まず最初に受けて頂くのはこちらの依頼です」
羊皮紙が一枚机に置かれると、依頼内容が書いてあった。
なになに?
薬草採集依頼。
十枚の薬草を納品。
報酬十銅貨。
やっす。
安すぎんかね。
十銅貨って千円くらいの価値しかないんだぞ?
十枚の薬草が一時間で採れたとしても時給千円ってバイトじゃないか……。
「場所はここから北に行ったところの森にあります。薬草は森の手前辺りに生えていますので、奥には入らなくても大丈夫ですよ。そこはスライムしか出てきませんから」
俺にとってはスライムは雑魚ではないんだけど。
まあでもやらないわけにいかないし、覚悟を決めるとするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます