キレイさっぱり
砂漠の使徒
ある男のブログより
あー、なんて言うべきかな。
今から話すことは、ちょっと……いやかなり変だ。
だからまあ、信じてくれなくってもかまわない。
ただ、これは実際に俺が体験した事実だ。
――――――――――
殺したんだ。
つい、弾みでな。
きっかけは些細なケンカだった。
エスカレートしちまって。
近くにあったビール瓶で殴っちまった。
当たり所が悪かったのか、それか血が出すぎたのか。
とにかく、俺が翌朝家に戻ると真っ赤な血だまりの中で冷たくなってたよ。
もしあのとき逃げずに救急車を呼んでたら。
まあ、後悔しても死体は起き上がらねえ。
だから俺は、近くの交番に行くことにした。
自首ってやつだ。
潔く罪を償うよ。
――――――――――
「からかわないでください」
警察はすぐに俺の家に来た。
そりゃまあ、殺人事件が起きてんだからな。
しかし、現場のリビングを見た瞬間、首を傾げた。
警察も、俺もな。
なぜかって?
だって、死体がないんだよ。
いや、死体だけじゃねぇ。
フローリングに広がった紅い水たまり、粉々に砕けたビール瓶。
なにもかもが、キレイさっぱり消えていた。
さっきまでそこにあったはずなのに。
ちょっと家を空けた拍子に、はじめからなかったように。
結局警察は、不機嫌に帰っていった。
――――――――――
だがな、一番怖いのはソレじゃない。
たしかに死体が消えてゾッとしたが、一週間後にポストにこんな手紙が入っていた。
『毎度ありがとうございます。〇〇クリーンカンパニーです。この度は私共のサービスで無料にて清掃させてもらいました。今後ともお困りのことがあれば、ぜひとも我が社にお電話を。また、我が社では生きた状態からでも清掃を承っておりますのでぜひご検討ください』
(了)
キレイさっぱり 砂漠の使徒 @461kuma
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