リョウを操る少女

クライングフリーマン

末っ子

 俺の名前は富田林龍。「リュウ」と書いて、「リョウ」と読む。

 名字が長いせいか、皆、俺の事を「リョウ」と呼ぶ。

 兄弟姉妹は、4人。詰まり、5人きょうだい。すぐ下の妹は冴(さえ)、第三子は漠(ばく)、第四子は花(はな)、そして、末っ子は、留(とめ)。

 ありきたりの名前。

 俺の両親通(とおる)と幾重(いくえ)は、器用に2年毎に子供を作った。


 きょうだいで、よくヒーローごっこをしたが、必ず留がリーダーだ。

 末っ子というのは、どこもそうらしい。

 人数に関係無く、親が甘やかして育てる。

 我が強いのだ。


 あれから何年経ったかな?

「リョウにい。会館の人が呼んでるよ。喪主様―って。」

「お前、普通に言えよ、還暦過ぎたのに。」

「還暦言うな。」

「孫4人もいるのに。」

「孫の事言うな。」


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「皆、集まれー。火葬場、5日待ちだってよー。」

「やっぱし。リョウにい、引き受けたの?皆用事あるんだよ。仕方が無いだろ。2人同時だったから、まだマシだろ?片方の満中陰済んでからとか遺産相続済んでから亡くなると、大変だぞ?」

「兄貴。例えはいいよ、今は。で、どうする?火葬が5日後ってことは、お通夜が4日後だよね。集まり直す?」

「それしかないだろうな。」と、俺は冴に返事をした。

「4日分、お泊まりか。費用嵩むね。大丈夫?」

「まあな。」「兄さんの家に帰ったら、永久にお泊まりだけどね。」と、漠が混ぜっ返す。

「漠。お前、マスコミ対応な。先生の葬式で慣れてるだろ?」

「ああ。五月の蠅だからな、奴らは。もう来てるの?」

「表に車あっただろ?電柱の向こう。」

「引き受けた。俺の腕を見せてやる。」

 漠は、漫画家のアシスタントから、副社長兼プロデューサーになった。半年位前に、師匠である漫画家大先生が流行病の為、逝去した。

 マスコミは、しつこく家族をつけ回した。漠がいなければ、先生の家族は「餌食」になるところだった。

 ウチは、オヤジが俳優、お袋が女優だった。売れない時期が無かった、と聞いている。

 マスコミの目当ては、当然、2人の遺産だ。

 俺達は、親を見て育った。全く無関係とは言えなくとも、親の仕事は継がなかった。

 オヤジやお袋の役者仲間の子息達とも交流があったから、俳優・女優になって、実力はあってもなかなか認めて貰えないのが常だったのを見ているから、各々違う道を選んだのだ。

 冴は教師、漠は漫画家のアシスタント、花は花屋、そして、末っ子の留は、陶芸家だ。

 再集合を決めて、葬儀会館を出ようとしたら、色んな方向から「五月の蠅」が跳んできた。

 留は、先頭の何人かの『大男』を、平手打ちした。

 俺は、俺達は、見て見ぬ振りをした。留に勝てるきょうだいはいない。

「そんなに、人の不幸が嬉しいか?下品!!」

 言い捨てて、真っ先に亭主の車に乗り込んだ。

 俺達も、唖然とする奴らを置き去りにして、車で帰途を急いだ。

 数日後の対応を考えながら。

 ―完―






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リョウを操る少女 クライングフリーマン @dansan01

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