第15話
【第七班メンバー】
■ リーダー:ミリア・ブラスト
年齢:17歳/性別:女性/出身地:シヴァ大陸・辺境の浮遊要塞都市「アルスト=クラヴィス」
属性:氷(潜在)/武装:
特徴:
・男まさりな口調で、ヤンキー気質。
・冷静沈着な戦術家。感情を表に出すことが少なく、常に状況を俯瞰している。
・元軍事都市の防衛部隊出身。スカイギルドに自ら志願して参加。
・高い機体操縦技能と空戦戦術理解力を持ち、若くして“リーダー適性”を与えられた。
・トレインとは試験前から何度か顔を合わせており、静かにライバル心を燃やしている節もある。
役割:班の牽引・進行管理・戦闘指揮全般。
キーワード:「命令ではなく、“導く”力で人を動かす」
⸻
■ ジーク・ハンロック
年齢:19歳/性別:男性/出身地:ボルカン大陸・雷都「オルド=ダスト」
属性:雷/武装:重式エアアーム《ヴォルトクラッシャー》
特徴:
・筋骨隆々、豪放磊落な雷属の戦士。力任せに見えるが、意外に仲間思い。
・元鉱山警備隊の副隊長。地形把握能力と破壊力に優れる。
・“空”への適応はやや粗削りだが、突発的な状況に強く、突破力は高い。
・トレインとは反対のタイプだが、意外とウマが合う。騒がしい兄貴分ポジション。
役割:前衛突破・障害除去・乱戦時の制圧。
キーワード:「風は読まん、でも感じるんだよ、こう……ビビッと!」
⸻
■ セラ・オルディアス
年齢:16歳/性別:女性/出身地:ルクス大陸・聖都「アレリア」
属性:光/武装:
特徴:
・柔らかく穏やかな性格ながら、魔術に関しては極めて高い素養を持つ。
・浮遊島航路や神秘文献に詳しく、知識・分析・魔法解析の専門家。
・病弱な過去を持ち、肉体的にはやや劣るが、魔力制御と観察力で補っている。
・トレインにはやや警戒心を抱いていたが、彼の風の感応力を見て興味を持ち始めている。
役割:魔術支援・解析・情報収集。
キーワード:「見えない風にも、意味があるんです」
⸻
■ カイ・リューレンユク・ラングレー
年齢:18歳/性別:男性/出身地:ヴェントゥス大陸・低空都市「スルギア」
属性:風(操艇特化)/武装:
特徴:
・操縦特化型のエリートパイロット。風読みと空間制御に関しては抜群のセンスを持つ。
・スカイボード・エアライド双方に対応。飛行ルート最適化の名手。
・性格は気だるげで淡泊だが、任務になると一変して精密な動きを見せる。
・トレインの風感知力を高く評価し、内心「育てたい」気持ちを持っている。
役割:操艇統括・空中戦術補佐・回避誘導。
キーワード:「空は、読みきれないからいいんだよ」
------------------------------------------------------------
ノエルの声が静かに消えると、エア・ルーム全体に微かな振動が走った。
天井に浮かぶ風環(エア・サークル)が一段階低く回転し、床の石版が淡く光を帯びる。
「班別移動開始――指定ミーティングルームへ向かえ」
塔内の魔導音声が響いた瞬間、室内の壁面にそれぞれの班番号と名前が記された光の標が浮かび上がる。
「第七班、こちらです」
ギルド補佐官のひとりが、手を挙げて案内の導線を示した。
トレインは腰を上げ、風刻カードを確認しながら、その方向へと歩き出した。
視線の先には、すでに数人の人影が集まり始めている。
ミリア・ブラストが、真っ直ぐ立っていた。
その横には、銀髪の長身――ジーク・ハンロック。彼は大きな腕を組み、無言で他の参加者を見下ろしていた。
その斜め向かいには、緩やかに髪を束ねた少女、セラ・オルディアス。どこか気の抜けたような笑みを浮かべている。
最後に、一人だけやけに気だるげな様子で壁にもたれかかっている青年がいた。細身のフレーム、どこか空を見ているような眼差し。
——カイ・リューレン。
「全員、揃ったようだな」
ミリアが淡々と確認すると、補佐官が頷き、扉のひとつを開いた。
「こちらが、班ごとのブリーフィングルームです。必要な戦術地図と情報端末も揃っております。どうぞご自由に」
一礼し、補佐官が姿を消すと、重厚な扉が音もなく閉まった。
静寂が訪れる。
第七班、初めての“空域の密室”。
内装は質素ながら清潔で、中央には円卓があり、その上に試練用のホログラフ地図が投影されていた。
各自の名前が記されたパネルが、すでに配置されている。
トレインが席につくと、隣のジークがぐっと腕を組んだまま、ニヤリと笑った。
「おう、試験で見てたぜ。あんたなかなかやるな」
「……ありがとう。あんたも、派手だった」
「はっ、褒め言葉と受け取っとくぜ」
反対側では、セラが魔導端末を操作しながら穏やかに言葉を挟んだ。
「ここ、空気の流れがすごく安定してる……地下の風脈を利用してるのね。ギルドの制御術式、さすがだわ」
「……俺たち、空を走るんだろ?地上の話は今はいいよ」
壁際のカイが、ぼそりと呟く。
「でも大事よ?空に浮かぶものは全部、どこかの“根”を持ってる。忘れちゃだめ」
セラはやんわりと微笑む。
その横で、ミリアが淡々と割って入る。
「無駄話はあと。トレイン・フェザーネット、あんたが最後だった。——第七班、ここで初顔合わせだ」
彼女は視線を全員に向けた。
「私は、ミリア・ブラスト。基本的にはなんでもイケる口だ。戦闘と航法、両方任せてくれたらいい。
この班のリーダーとして、必要な采配は私が下す。異論は?」
「ねぇよ」
ジークが即答する。
「私は異論よりも提案が好きだわ」
セラが微笑む。
「……適当にやって、ひとまずは落ちないようにするよ」
カイが肩をすくめる。
ミリアは目を細めた。
「よし。じゃあ、まずは“島No.17”からのアプローチを確認する。
航路、地形、気圧変動、敵性情報……セラ、調べてくれ。
ジーク、突入ルートの選択肢と戦術配置、頼む。
カイ、風脈の経路スキャンと航行補助。
トレイン、あんたは全体の風の流れを感じて、異常兆候があったら即報告」
全員が、無言で頷いた。
風が、彼らをひとつにしようとしている。
この小さな部屋が、これから空を翔ける五人の“第一の甲板”になるのだと、誰もが感じ始めていた。
「……さて」
ミリアが立ち上がり、風の地図を指差す。
「まず、全体のルートを可視化するぞ」
ミリアが中央の円卓に備えられた魔導端末に手を触れると、ホログラフの投影が更新された。空中に浮かび上がったのは、5つの島とその周囲の空域を示す立体マップ。島々にはそれぞれ番号が振られており、薄いラインで航路が繋がっている。
「これが第七班の試験ルート。順に、No.17、21、08、03、そして最後に“封印指定”の島……」
「封印指定って、何が出るかまだ伏せられてるんだっけ?」
セラが指先でその最後の島を回転させながら尋ねた。
「そう。ギルドの規定で、試験中は非公開。到達時に“開示”されるらしい。つまり、どんな課題かも、その場になるまでは不明だ」
「試されるのは、臨機応変さってことか」
トレインが地図をじっと見ながら呟く。
「あるいは運かもね」
カイが壁にもたれたままぼそりと言う。
「でも運って、結局は“対応力”の別名だし」
「……言い得て妙ね」
とセラが静かに頷く。
ジークが腕を組み直して、地図を指差した。
「で、最初の島——No.17。ここは“風食地帯”って記録されてるな。空域の気流が激しく崩れる場所だ。
たぶん、試されるのは“飛行安定性”と“探索”。俺が先に降りる」
「私もついて行くわ」
セラが手を挙げた。
「植物の密集地みたい。あたし、感知魔法も使えるし、地質や魔力流の分析は得意」
「よし、ふたりで初動班を組んでくれ」
ミリアが頷く。
「僕は、風脈のサポートをしながら上空に残るよ。島の周囲の流れが読めれば、次の島へのルートが組みやすい」
カイの声は淡々としていたが、その内容は正確だった。
「……カイ、お前本当は結構考えてるだろ」
ジークがふと笑う。
「見た目、やる気なさそうなのに」
「そう見せてるほうが、敵にも味方にも余裕ができるからね。ほら、こうして今も、ちょっとだけ安心したでしょ?」
ジークが鼻を鳴らし、笑いをこらえるように肩を揺らした。
トレインも自然と笑みを浮かべる。
「……なんか、意外とバランスいいかもな、この班」
「意外、じゃなくて必然よ」
ミリアが一言。
「試験の班分けはランダムじゃない。“風の導き”と、“ギルドの意思”が混ざってる」
「そういうもんなのか……」
トレインがぽつりとつぶやくと、「そういうものなのよ」セラが柔らかく重ねた。
「きっと、この出会いも試練のひとつ」
その言葉に、ふと空気が静まる。
それぞれが互いに視線を交わし、確認するようにうなずいた。
ミーティングルームの窓の外では、風柱が青白い螺旋を描きながら、天頂へと吹き上がっている。
ここから始まる試練。
5つの島、未知の空域、そして“封印された最後の島”。
けれど今、五人の間には確かに“風”が流れ始めていた。
それはまだ微かな、けれど確実な“旅団の胎動”だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます