第七話:The Watcher of The Full metal
ヴァルドニア帝国の大総統執務室。
豪華な装飾が施されたその部屋の中央に、一人の男が跪いていた。銀色の髪を持ち、鋭い眼光を湛えた軍人。彼こそがヴァルドニア軍特殊部隊「ナハトヴォルフェ」の指揮官、ルーカス・フェンリッヒ大佐である。
「フェンリッヒ大佐」
重厚な机の向こう側から、大総統の低く威厳に満ちた声が響く。
「貴様に新たな任務を与える」
「御意」
ルーカスは深々と頭を下げた。
大総統はデスクの上に一冊の本を置く。装丁は古び、表紙には不気味な魔獣の姿が描かれている。ルーカスはそれを一瞥すると、幼い頃に読んだことのある物語の一つだと気づいた。
「これは……七大厄災の伝承に関するものですか?」
「そうだ。我が国の民なら誰もが一度は耳にしたことがある話だろう。しかし、これは単なる絵空事ではない」
大総統の目が鋭くなる。
「貴様は『エクスマキナ』の名を聞いたことがあるか?」
ルーカスは一瞬、記憶を巡らせた。風災を司る七大厄災の一柱。伝承では、かつてその鋼の肉体で、多くの都市を廃墟へと変えた魔獣とされている。
「鋼の魔獣……。ですが、それは神話上の存在では?」
「神話ではない。ロンレイの奥深くに封印されているのだ」
ロンレイ──かつてヴァルドニアによって征服された植民地。豊富な魔石資源を持つその地は、帝国の支配下にありながらも未だ反乱の火種が燻っている場所でもある。
「ロンレイに眠るエクスマキナ。その封印がどのような状態にあるのかを調査しろ。そして、もし封印を利用できると判断したならば、我が軍のために役立てる方法を探れ」
「了解しました、大総統閣下」
ルーカスは深く頭を下げた。
「ナハトヴォルフェはいつでも任務を遂行する準備ができております」
大総統は満足げに頷くと、椅子に深く腰を掛けた。
「貴様の目──アズリビオンは、ただの義眼ではない。それを使えば、封印の本質が見えるはずだ」
ルーカスは左目の義眼に手を添える。
「……そのために私を選ばれたのですね」
「そういうことだ。貴様ならば、帝国のために最良の判断を下せるだろう」
「光栄に存じます」
ルーカスは再び跪き、静かに敬礼を示した。
こうして、彼はロンレイへと旅立つこととなる。七大厄災の封印、そして自らの義眼が映し出す『真実』を見るために。
ルーカスは、ナハトヴォルフェの隊員たちと共に、ヴァルドニア帝国の軍用飛行艇に乗り込んでいた。行き先はロンレイ。七大厄災の一体、殲鋼王エクスマキナが封印されているとされる地だ。
飛行艇の内部は静かだった。揺れに慣れた隊員たちは、与えられた任務を理解し、それぞれの武器と装備を確認している。魔導銃を磨く者、術式を確認する者、目を閉じて瞑想する者——皆が任務に備えていた。
ルーカスは座席に深く腰掛け、義眼であるアズリビオンを通して窓の外を見つめる。青い魔石でできたその左目には、ただの景色ではなく、何か別の“影”が映ることがある。風の流れ、魔力の渦、あるいは過去の残滓——。
「大佐、到着予定まであと十七分です」 副官の報告に、ルーカスは軽く頷いた。
「……ロンレイか」
彼はこの土地に特別な思い入れはなかった。ただ、帝国のため、ヴァルドニアの繁栄のために動くだけだ。しかし、大総統はこの任務を極めて重要視していた。七大厄災の封印地を調査し、その力を帝国の糧とすることが目的なのだ。
「童話の中の怪物が、今も眠っているとはな」
ルーカスは呟き、義眼をそっと瞑る。その視界に、まだ見ぬ鋼の影がちらついた。
ロンレイの空は鉛色の雲に覆われ、時折冷たい雨が大地を打った。ナハトヴォルフェの飛行艇が厚い雲を抜けると、眼下には広大な荒野と風化した遺跡が広がっていた。ここはかつて繁栄していた王国の名残であり、今はヴァルドニアの植民地として辛うじて存続している場所だ。
ルーカスは無言で視線を下ろし、左目のアズリビオンを起動させた。青い魔石の義眼が淡い光を放ち、視界に刻まれた残滓が浮かび上がる。
「(……この地で、何があった?)」
ルーカスの問いかけに応じるように、彼の視界に影が揺らめいた。
荒廃した石畳の上に、無数の屍が転がる。燃え盛る家屋、逃げ惑う者たち、そして咆哮とともに降り注ぐ刃の嵐。そこに立つのは、巨大な魔獣。
「(殲鋼王エクスマキナ……か)」
記録では伝えられていたが、こうして自らの目で過去を覗くのは初めてだった。エクスマキナはかつてこの地に君臨し、ロンレイ人を恐怖に陥れた存在。その圧倒的な力は、人間の軍勢をも容易く蹂躙した。
飛行艇がロンレイの封印区域の近くへと着陸した。
ナハトヴォルフェの部隊が降りて周囲を確認する。
ナハトヴォルフェの部隊員の一人がルーカスの元に駆け寄る。
「大佐、周辺に異常はありません。しかし、封印区域の魔力反応がわずかに上昇しています。」
ルーカスは静かに頷き、視界の残像を閉じた。すべてはすでに過ぎたこと。だが、この地には未だにその影が色濃く残っている。
「封印が揺らぎ始めている……か」
彼はコートの襟を正し、部隊を率いて遺跡へと歩を進めた。
ルーカスは視界に残る歪んだ残像を振り払うように軽く頭を振った。目の奥に焼き付くエクスマキナの蹂躙の記憶──それは彼が初めて目にするはずのものだったが、妙な既視感があった。
「大佐、どうされました?」
ハイネが気遣うように声をかける。彼はナハトヴォルフェの副官であり、ルーカスの右腕とも言える存在だ。
「……問題ない。封印の状態を確認する」
ルーカスは冷静に応じると、封印施設の奥へと歩みを進めた。施設はかつてロンレイの神殿だった場所を改修したものであり、封印の間には古代語で綴られた碑文が刻まれている。壁には青い魔石──《アズライト・オキュルス》が埋め込まれ、青白い輝きを放っていた。
封印を維持する術式の要であるアズライト・オキュルスは、エクスマキナの力を抑え込むと同時に、その影響を封じる役割を担っている。しかし、ルーカスの左目──アズリビオンが捉えたのは、確かに「揺らぎ」だった。
「……やはり、封印が弱まりつつあるな」
ルーカスはアズリビオンを細め、壁の魔石に触れた。触れた瞬間、微弱な振動が指先に伝わってくる。魔石が発する波動が乱れているのは明らかだった。
「報告書では、封印は完全な状態を維持していると記されていたはずだが?」
「確かに、そのように記録されています。だが、実際にこの場で確認すると、少しずつ魔力が漏れ出しているようです」
副官のハイネもまた、慎重に壁を調べる。手にした測定器がかすかに警告音を発し、ルーカスの推測が正しいことを裏付けた。
「封印の崩壊が進行しているとすれば──」
ルーカスは口を噤み、思考を巡らせる。このままでは、遅かれ早かれエクスマキナが目覚めることになる。今すぐにでも対策を講じる必要があった。
「本国に報告を上げる。大総統閣下の指示を仰ぐべきだろう」
ルーカスはそう決断し、施設を後にする。だが、その背後で──封印の間の壁に埋め込まれた魔石の一つが、ごくわずかに光を瞬かせたことに彼は気づいていなかった。
静かに、確実に、何かが目覚めようとしていた。
神殿を後にし、夜闇の広がるロンレイの廃墟に足を踏み出したルーカスとナハトヴォルフェの部隊員たち。神殿の外は不気味な静寂に包まれ、風が乾いた土を舞い上げていた。しかし、その静寂はすぐに破られることとなる。
突如、地面が震え、瓦礫の間から巨大な影が蠢いた。細長くしなやかな胴体がうねり、鈍い青白い光を放つ鱗が月光に照らされる。魔物は蛇のような姿をしており、異様なまでに長大な体を持つ。だが、その姿はただの蛇ではなかった。鋼の鱗を身に纏っていた。
「……これは、エクスマキナの残滓か」
ルーカスは低く呟いた。アズリビオンが微かに輝き、魔物の魔力を映し出す。その魔物は、かつてこの地を蹂躙した七大厄災の一端を担う存在。その残滓が今もなお息づいている。
魔物が頭をもたげた瞬間、鋼の刃が飛び、周囲の瓦礫が撃ち飛ばされた。
「構えろ!」
ルーカスの号令が響き、ナハトヴォルフェの兵士たちは素早く持ち場につく。魔導銃が一斉に魔力を帯び、蒼白い光を放った。だが、魔物はまるでそれを嘲笑うかのように鋼の刃が、銃撃を撃ち落としていく。
まるで意思を持つかのような刃が兵士たちに襲いかかり、数名が傷を負う。
ルーカスは冷静に状況を分析する。この魔物は単なる力任せの獣ではない。戦いを理解し、戦術的に動いている。そして、確実に自分たちを試している。
「ならば、こちらも見せてやろう」
ルーカスは左目のアズリビオンを起動させた。義眼が妖しく光り、魔物の魔力の流れが彼の視界に浮かび上がる。
「お前の動きは読めている」
彼は微笑み、剣を抜いた。ナハトヴォルフェの兵士たちも立ち上がり、迎え撃つ準備を整える。
ルーカスは体勢を立て直し、アズリビオンを輝かせながら魔物を見据えた。巨大な蛇の魔物は、大地を這うように滑らかに動きながら、鋼の鞭のような尾を振るい、兵士たちを吹き飛ばしていた。
「クソッ、距離を取れ!」
ナハトヴォルフェの兵士が叫ぶが、既に数名が魔物の一撃を受け、地面に叩きつけられていた。
「……ここが試されるな」
ルーカスは静かに呟き、左目のアズリビオンを研ぎ澄ます。魔物の魔力の流れが視える。蛇の胴体を覆う魔力の流線が浮かび上がる。
「フォルカー、イーゼン! 右から回り込め。ブレンナー、ナール、後方支援に回れ!」
的確な指示を飛ばしながら、ルーカスは一歩前へ出た。魔物の黄金の瞳が彼を捉える。次の瞬間、蛇の口が大きく開かれ、強烈な魔力の奔流を吐き出した。
「来るぞ!」
ルーカスは即座に剣を抜き前進した。アズリビオンの視界を頼りに、鋼の刃の渦を縫うように駆ける。魔物の動きを見極めた彼は、一閃を放った。
剣が魔物の鱗に突き立てられ、鮮血が舞う。しかし、蛇の魔物は怯むどころか、さらに激しく刃を操り、巨大な体を巻きつけるようにしてルーカスを捕えようとする。
ルーカスは冷静に刃を返し、蛇の胴体を切り裂く。しかし、魔物の動きは止まらない。逆にその傷口から鋼の刃が吹き出し、周囲の地面が削られていく。
「……やはり、普通の手段ではダメか」
ルーカスは剣を収め、左目に意識を集中させた。アズリビオンが深く輝きを増し、魔物の魔力の流れがより明確に映し出される。
「ならば、弱点を突く」
彼はすぐに気づいた。魔物の力の源は胴体の中央部にある魔核——《コア》。そこを潰せば、鋼の魔力の制御が崩れるはず。
「総員、狙うはあのコアだ! 一斉攻撃をかける!」
ルーカスの号令とともに、ナハトヴォルフェの兵士たちが動き出す。
兵士たちは一斉にコアへと狙いを定めた。だが、魔物もそれを察知したかのように身体を大きくうねらせ、鞭のような尾を振り回す。
「くそっ!」
一人の兵士が吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。その瞬間、ルーカスのアズリビオンが淡い光を放ち、彼は一瞬だけ未来を視た。魔物が次に攻撃を繰り出す軌道、その動きが脳内に鮮明に浮かび上がる。
「右へ飛べ!」
ルーカスの指示により、別の兵士が寸前で魔物の尾の一撃を回避する。彼はすぐに狙いを定め、ライフルを撃ち込んだ。しかし、コアを守るように魔物の鋼の鱗が収縮し、弾丸を弾いてしまう。
「これじゃ突破できねえぞ!」
兵士の一人が叫ぶ。
「ならば、力技で突破する!」
ルーカスは腰のホルスターから試作型の魔導銃を取り出し、アズライト・オキュルスの力を込めた。青い光が銃口に集まり、強烈な魔力弾となる。
「狙いを定めろ……!」
彼は息を整え、一瞬の隙を見つけて引き金を引いた。
轟音と共に魔力弾が放たれ、まっすぐコアへと向かう。魔物は防御しようとするが、その動きすらルーカスには視えていた。
そして、閃光が迸る――。
ルーカスの銃弾が正確に魔物のコアを貫いた。
通常であれば、魔物は絶命し、その肉体は崩れ去るはずだった。しかし、今回ばかりは違った。
コアが砕ける瞬間、裂け目から異様な魔力が噴き出し、魔物の体が異常な膨張を始めた。まるで最後の抵抗を見せるかのように、蛇のような胴体は軋みを上げながらうねり、漆黒の瘴気を撒き散らしていく。大気が歪み、まるで空間そのものが魔物に呑まれそうな錯覚を覚える。
「……まだ終わりじゃないか」
ルーカスはアズリビオンの感覚を研ぎ澄ませた。義眼を通じて見えるのは、コアが砕けたにも関わらず、未だ消えない魔物の魂の残滓。七大厄災の力の名残が、魔物を無理やりつなぎ止めているのだ。
「ならば、完全に断ち切るしかない」
彼は素早く魔導銃のトリガーを引いた。銃口から放たれた魔力弾が魔物の中心に炸裂する。しかし、それだけでは足りなかった。瘴気がまるで意思を持つかのように銃弾を弾き、膨れ上がる肉体を保ち続けている。
(……これは、もはや単なる魔物ではない。七大厄災の力が封印されていた証だ)
ルーカスは即座に戦術を切り替えた。アズリビオンの力を引き出し、魔物の根源を視る。そして、魔物の体内に今なお残る魔力の源泉を探り当てた。それは、砕かれたコアの断片に凝縮されていた。
「見えた……!」
次の瞬間、彼は疾風のごとく駆け出し短剣を抜くと、魔物の膨れ上がった肉体へと飛び込んだ。渦巻く瘴気の中、彼の左目が青く輝く。
アズリビオンの視界に映るのは、微細な魔力の流れ。それを見極め、断ち切るべき一点を理解する。彼は迷わず短剣を振り下ろした。
刃が魔物の膨れ上がった中心へ突き刺さる。瞬間、断末魔のような咆哮が響き渡った。鉛色の瘴気が一気に霧散し、魔物の体が静かに崩れ落ちていく。
荒れ狂っていた魔力が収束し、静寂が訪れた。
ルーカスは深く息をつき、短剣をゆっくりと収めた。
「やれやれ……厄介な相手だったな」
彼は最後に、アズリビオンを通じて魔物の残骸を見つめる。七大厄災の影を宿していたそれは、もはや完全に消え去った。しかし、彼の心にはある確信が芽生えていた。
(この封印……確実に弱まっている)
彼はロンレイの神殿を見上げた。
「……早く報告をしなければ」
そう呟くと、彼は懐から通信機を取り出し、大総統へと連絡を入れるためのチャンネルを開いた。
「こちらルーカス・フェンリッヒ大佐。至急、大総統閣下に報告したい」
無線の向こうから短い応答があり、すぐに別の人物の声が入る。それはヴァルドニア大総統の冷徹な声だった。
「報告せよ、大佐」
ルーカスはまっすぐに前を見据えながら、淡々と戦闘の詳細を語った。
「エクスマキナの封印が存在する神殿に到達し、内部を調査。封印そのものにほとんど異常は見られませんでしたが、周囲に異常な魔力の漏出を確認。その直後、封印の影響を受けたと思われる魔物が出現し、交戦。我々はこれを殲滅しました」
「……封印は問題ないと?」
「はい。現時点では健在と判断します。しかし、魔物の発生は封印の安定性に影響が出始めている証拠とも考えられます」
大総統は沈黙した。その間、ルーカスは無線機越しの気配を感じ取る。単なる報告のやり取りではなく、相手の思考が読めるかのようだった。
「ふむ……大佐、お前はどう考える?」
「このまま放置すれば、封印が今後徐々に弱まる可能性があります。我々ナハトヴォルフェの監視を強化するべきかと」
「……良い判断だ。引き続き監視を続けよ」
「御意」
無線が切れ、ルーカスは静かに息を吐いた。彼の義眼――アズリビオンが微かに光を帯びていた。大総統の反応から察するに、ヴァルドニア側でも何らかの動きを見せるだろう。彼は無線をしまい、部下たちへ視線を向けた。
「警戒を続けろ。何が起こるか分からん」
ナハトヴォルフェの隊員たちは、一斉に敬礼し、命令に従った。神殿の静寂の中、ただ風の音だけが響いていた。
【帝国騎士団本部寮のヴェルティリッシュの部屋】 部屋に月明かりが差し込んでいた。
その部屋の中央に置かれた椅子に、ヴェルティリッシュは静かに腰を下ろしていた。両腕のアルカネイルが露わになっており、そのメンテナンスを担当しているのは技師のエリザベスだ。彼女は細い工具を器用に扱いながら、ヴェルティリッシュの左腕の接合部を慎重に確認している。
「最近、違和感はある?」
エリザベスが問いかけると、ヴェルティリッシュは無表情のまま首を軽く振った。
「問題ない。ただ、若干の調整は必要かもしれない」
「了解。じゃあ、少しだけ同期を調整するわね」
エリザベスが手元の端末を操作し、微調整を加える。その間、ヴェルティリッシュはじっと前を見つめていた。機械と生体が融合したこの腕は、自身の身体の一部でありながら、本来の自分ではない。そう理解しているが、今はそれが当たり前になっていた。
ふと、その瞬間だった。
鋭い痛みが胸を貫いた。
「……ッ!」
ヴェルティリッシュは反射的に胸元を押さえた。心臓が締め付けられるような感覚、だがそれはまるで自分のものではないかのようだった。視界が一瞬揺らぎ、頭の奥で鈍い響きが広がる。
「……リッシュ?」
エリザベスが驚きの声を上げ、手を止める。
「どうしたの、大丈夫?」
ヴェルティリッシュは数秒遅れて、ゆっくりと顔を上げた。紫の瞳が困惑に染まる。
「……わからない。急に……胸が、痛んだ」
エリザベスは眉をひそめ、ヴェルティリッシュの様子を慎重に観察する。
「同期ミス……じゃないわよね。神経伝達にも異常はないはず……」
ヴェルティリッシュは息を整えながら、胸の奥に残る違和感を探る。痛みは収まりつつあったが、確かな“何か”が自分の内側で蠢いたような感覚が残っている。
「(今のは……何だ?)」
まるで、自分の知らないどこかで、何かが起こったかのような。
その答えを探るように、ヴェルティリッシュは無意識に手を握り締めた。
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