ナイトメア


恋人同士の最期の日

僕は君の涙を疑わなかった

だから「ウソツキ」はお互い様だ・・・


もう二度と、見つめ合う事は許されない女を前に

他に何か体のいい嘘で間に合わすことなどできはしない

俺は既に「君を幸せにする」と決めていたのだから。


{彼女と離れて暮らすこともできる}と、自身に暗示をかけた。

すぐに苦しくなって「ごめん!やっぱ無し!」って泣きつくの?

君にはお見通しだったのだろうけどね。

大損するのわかってて、一世一代の大博打だ。

そこはむしろ男前だと褒めてもらいたいくらいだよ。


もはや一文無しだ。

信じる分にはタダだろ?

いつかまた会えると…

再会できる事を信じて疑わないものだから、友人には迷惑かけてしまったけど

そこはまあ、みんな笑って許してくれたよ

俺は本当にズルい男だよな。


必ず{お前を幸せにできると}信じていた、かつての馬鹿な俺。

だって、お前は俺の運命の女だろ?

その笑顔が、たとえ誰に向けられていようとも…

俺は最初から君のイチファンにすぎないのだから

ヒロインを手に入れるためなら、なんだってしただけのね。


無口だった

昔から本心をお前に話したことは無いね

俺の気持ちを一度だけ話したのは…


あの秒針が止まりそうなほど、君の返事を待った、あの日だけだった。

君は喜んで指輪を受け取ってくれたよね。

一年にも満たない、たった数か月だったけど・・・

俺は、はじめて産まれてきた理由を感じられた。


だが手に入れたのは「思考」だけだった。

あの途轍もない数時間が、俺に何を齎したのか?

お前は・・・想像もできないよね?


そう、想像できるわけがない。

手触りや意識を疑似体験する為に、実験を繰り返したこと。

お前に想像できるわけがない。

けして、ぬぐえない君の涙を少しでも理解したくて

自分に君をトレースしていたなんて・・・

あまりにショッキングすぎて閲覧注意だろ(笑)



俺は、あの最悪の裏切りから

一度も君に迷惑なんかかけていなかったハズだ

人知れず君を想っているだけの

哀れな森の眠れる王子さまだったはずだ。


なのに俺の静寂の庭に小石が飛んできた

眠りから覚めてしまったんだ

手には沢山の針が刺さっていた

恐怖のあまり、痛みを忘れようともがいて、針は更に食込んだ

そして、あれから二度と眠りにはつけない。


だから手紙を書いてる

俺は、お前の苦しみを拭ってみせる

君の責めなら、真っ向から受けてやるよ

逃げも隠れもしない。


「おいで、コーヒーでも飲もう」

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