時代は近未来。出版物全般に対して、規制に次ぐ規制がかけられた世界の中で、14歳田中ゆり子さんはより良い作品を創作するため、AI相手に奮闘します。
そう聞いたら難しそうなイメージですが、語り口が実に軽妙!
知識において、ゆり子さんの遙か上を行くAIの言葉にも14歳はめげません。
凄いぞゆり子さん!負けるなゆり子さん!
ここまで駄目だしされたら大抵の人は心が折れそうなのに、彼女はまったく諦めないのです。
日本の先行きは不透明だけど、彼女の存在が創作の未来の明るさを見せつけてくれる気がしませんか?
創作する人にこそ是非読んでいただきたい作品です。
そして同時に考えてしまう。
そんな時代で、自分は書き続けられるのかと。
……いや、書き続けるかな。
書きたい皆様の応援歌とも呼べる作品です。
〝そうであったら良い〟という事が〝そうでなくてはならない〟という事にすり替わった未来世界。
主人公である田中ゆり子は、建て前を延々と聞かされます。
読んでいる者からしても、ほんとうに辟易です。
誰が得するんだ。それ?
という話しかしない公的スローガンに凝り固まった創作補助AI“クリエイト・オリジナリティ”
このAIの語る事柄は、ディストピア小説の思想統制もかくやと思われる表現規制の嵐です。
それでも、田中ゆり子はへこたれない。
多少、気は荒くなりますが。
どれほど縛りがあろうとも。
彼女の創作への意欲は、消えないのです。
モノ作りとは、かくあるべきでしょう。
本作は、クリエイターが世の習いに適うべく努める話であります。
そして、可笑しみのあるSFコメディでもあるのです。
また。
本作の妙味は、このメインストーリーの幕間に挟まれる、本編のバックグラウンドで進行する不穏な事件にもあります。
この構造は、ちょっと他に類を見ない。
奇抜で魅力的な物語が、ここにあります。
読まないままでいるのは、勿体ないですよ?
学校の勉強が嫌いだからサボって漫画を読もうとしたら、出版されている漫画が全て学校の授業と同じ内容でした。ならば「どうせ同じだ」と学校に戻ってくるでしょうか? 戻りませんよね。
やっていいことって、つまらないよね。危険なことって、愉しいんです。
この小説自体が、現代で言ってはいけないとされる(後ろに「とされる」と注釈されることにご注意を)ことを言い切り、危険を冒します。それが愉しいんです。
語り口も実にコメディ的。とにかく笑えます。
危険なことって、愉しいんです。そして、危険なことをするなら、愉しくやりましょう。
創作において、あまたの規制がなされた近未来
どんな規制かは、目次を見ればなんとなくわかりますが、本文を読むと、「こりゃあマジでひどいね」となります(少なくとも、わたくしは、なりました)
第1タグは「ブラックジョーク」
かじると、毒がしたたります
ただし、別タグには「コメディ」
その通り、全編、コメディタッチでとても読みやすいです
現代社会の風刺として読んでもよし
かわいい女子中学生・田中ゆり子の奮闘記と読んでもよし
各話が、ピリッとしたショートショートとして確立されているので、どこから読んでも良さそうですが、ぜひ、通して読んで、最後の1文にたどりついていただきたい
そして、小説のその後を想像してみてくださいな