第5話
朝食の後、お互い花見の準備ということでいったん解散することにした。
クローゼットを開けて部屋着から外出用の服を見繕って着替える。どうやら今日は春らしい暖かな日差しが部屋の中に差し込んでいる。お花見をするには絶好の日だといえるだろう。
歯磨きなども終えて整髪料で髪を整える。普段は外出の際、髪の毛は寝ぐせを整える程度で整える事は少ないのだが今日ばかりはゆめと並んでも恥ずかしくないように、最低限見た目には気を遣うのが礼儀というものだろう。
(おっと、そろそろ集合時間か)
時刻は11時30分、ゆめの部屋は俺の階より下にあり今回は俺がゆめの部屋にまで迎えに行くことにした。エレベーターに乗りゆめから教えてもらった部屋へと向かい少しの緊張を胸にインターホンを押す。
「はーい」
扉の先から聞き覚えのない声が聞こえる。違和感を覚えた直後キキィという音とともに部屋の扉が開かれた。
「あら?」
扉の先から現れたのは穏やかそうな雰囲気を纏った若い女性だった。
慌てて視線を部屋番号の方へと移す。そこには確かにゆめから聞いていた部屋の番号であり、インターホンを押す前にもしっかりと確認をした。ただ出てきたのはゆめではないということは俺が何かの間違いで部屋を間違えてしまったのだろう。
「す、すみません!部屋間違えました!」
とりあえずゆめにもう一度部屋の番号を確認しようと思いその場を立ち去ろうとした。
「ちょっと待って。もしかして・・・あなたが悠真くん?」
「え、はい。あの...どうして俺の名前を?」
「まあ!やっぱりそうなのね、初めまして。ゆめの母親の浅葱
「ゆめのお母さま!?」
どうやらこのどう見てもゆめのお姉さんくらいにしか見えない女性はゆめのお母さんらしい。実際には逆なのだが、確かにどことなくゆめの面影があり家族というのも納得はできる。ん?というか今何かおかしなことを言われたような...?
「あらあら、もうお義母さんと呼んでくれるの?ゆめの選んだ子だから心配はないと思ってたけどこれなら円満にやっていけそうね」
「あの・・・?」
「あらごめんなさいね、なんでもないわ」
「ところで本当にお母さまで・・・?お姉さんとかではなく・・・?」
「まあそんなうれしいお世辞まで言ってくれるのね。どうかしら、ゆめが高校に上がったらいっそのことゆめと二人暮らしなんて」
「いや、お世辞じゃなくて本当に・・・ってえ?」
「あ、お母さん!勝手に出ないでっていったじゃん!」
その時、若葉さんの後ろの方からなぜか少し赤くなっているゆめが顔を出した。
「ごめんねゆうくん、お母さんの言ってること本気にしないでいいからね?」
お母さんってのは本当なのか...。
「まあ、冗談はこのくらいにして・・・改めて悠真くん、ゆめをこれからもよろしくね。この子ったら小学生の時引っ越したあとしばらくゆうくんゆうくん、ってしばらく拗ねてたんだから」
「ちょっとお母さん勝手なこと言わないでよ!・・・確かに寂しかったけど...とにかく!私とゆうくんはもう行くからね、行ってきます!」
「ふふ、わかったわ。今日は人も多いから二人とも気を付けてね。悠真くん、ゆめをよろしくね」
「はい。謹んでお預かりします」
とりあえずゆめのお母さんには嫌なように思われてはいないのかな・・・?
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