第3話 八極拳が炸裂する。

 翌日、俺は制服姿の薫子と一緒に高校に向かうバス停まで一緒に歩いていた。何故こうなったかと言うと……。


 『薫子には社会性が足りない』と父親が言い出したのだ。


 結果、俺は薫子と高校に通うことになった。


「薫子、校内で八極拳は使うなよ」

「何故だ?世界征服には必要だ」


 あああ、面倒臭い……これから毎日、薫子の面倒を見るかと思うと気が重くなる。


 そして、朝の教室に入ると……。


「おい、弘真、彼女と一緒に勉強しに登校か?」


 俺に声かけてきたのは、クラスの上位カーストの嫌われ者の男子だ。


「こいつ偉そうだぞ、八極拳で始末していいか?」

「ダメだ、嫌われ者でも上位カーストの一員だ、後で何をされるが分からない」


 俺は渋々、薫子を紹介する事にした。


「うちの会社で開発された、メイドロボットの薫子だ、よろしく頼む」

「けっ、貧乏社長の息子のお前には贅沢なモノだ、僕が貰ってやってもいいぞ」

「御主人様をバカにするな!八極拳で成敗してくれる!」


 いかん、俺が止めようとした瞬間には薫子は嫌われ者の男子に八極拳を放っていた。


 あああ、やっちまった。上位カーストから被害を受けるのは俺だぞ。


 それから、翌日のことである。


 朝、登校すると、皆、俺の事をシカトする。


 明らかに昨日、上位カーストの嫌われ者の男子に八極拳をくらわせたからだ。元々、クラスで浮いていた俺にはさほど痛い事ではない。しかし、SHL前のクラスの全員が集まった、担任の来る直前の事である、薫子は教卓に立ち演説を始める。


「私は怖く無い、例え上位カーストの方針でも、自分の正しいと思った事をしたまえ!」


 突然の出来事にクラスの皆は一瞬の沈黙の後に大きな拍手をする。それは、上位カーストに薫子が勝った事を示していた。


 おせっかいなメイドロボットだ。そんな事を思いながら感謝するのであった。

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