先輩と心霊写真(短編)

夏目彩生(月白)

会社に不満はなかった……

僕は今とっても恐ろしい!

とっても恐ろしいよ!!


聞いてほしいんだけど 、僕のさ、僕の会社の先輩が大量殺人犯だった!


その前に聞いてほしいのは僕の能力のことさ!

僕っていうのは昔からお化けが見えてどうしようもなかったんだ。


その上僕が写真のシャッターを押した途端に幽霊ばっかり映ってしまってたまったもんじゃない。


だから僕は 「写真、禁止な」なんて 家族に言われているんだ。


それで問題の先輩だ!僕はこのあいだ、この会社に転職した。


転職って言っても 僕は5回目さ、僕はとても仕事ができないからね。


そうは言ってもたまには向いてる仕事っていうものがあるものだろ、それが ここだったんだ 。


だから 僕は絶対に ここを辞めたくない、ここが気に入ってるんだ!


「お前は定年まで働く仕事にようやくありつけた」って家族も喜んでいたところだったんだぜ。


けれど先輩だ!

なんと先輩ってば 背中に何人も何人も 幽霊が張り付いているじゃないか!


僕は恐ろしかった、恐ろしかったよ!

なぜならそのうちの1人はニュースで見た 行方不明の女性だったんだよ。


それで気になったら他の人も、他の人もみんなみんなさ!なんてことだ !


ということは、自然に考えたら 先輩は 大量殺人犯ということじゃないか。 なんて恐ろしいことなんだ!



けれど 僕は転職をしたくないんだ。


僕は一生懸命 一生懸命考えて 、それでどうにか妙案が浮かんだ。


どんな 案かって言うと、僕の能力、僕の家族、 友人 、いろんな人に疎まれたこの心霊写真を撮る能力、それで先輩を 追いやれないかと思ったんだ!


だってそうだろ、そんな写真をもし匿名で送られたら自分の殺人がばれてるって恐れて先輩は会社を辞めるに違いない!


けれど匿名で送らなきゃいけない、そこがポイントなんだ!


だってバレたら「お前は俺の犯行を知ってるて事だろう。じゃあ 生かしておけねえ 」ってなるじゃないか!!


そういうわけで、とってもリスクがあるけれど僕はそうすることにした 。


だってようやくありつけた、いい会社だからね。



早速 利用することにしたのが、その先輩にすっかり 惚れ込んでいるって有名な女子社員の愛子ちゃんだ。


先輩はああ見えて顔だけはとってもいいからさ 、女子社員に人気あるんだ。


なかでも愛子ちゃん はほの字だって有名だった。 態度があからさますぎるからな!

それで 愛子ちゃんに僕は取引を申し立てた。


「僕は君と先輩のツーショットを取ってあげるよ。 だから こっそり 協力してくれないかい ?僕がそんなことをしてるって言うのは先輩には内緒だよ!」


愛子ちゃんはノリノリだった。 僕は言った。

愛子ちゃんに先輩をベロベロに酔わせてくれないかって。

愛子ちゃんはノリノリで、この間見た本の知識だって、お酒に塩まで入れちまったんだ! そうすると酒が早くまわるらしいね!


ま本って言っても愛子ちゃんのことだから、どうせライトノベルかなんかなんだろうけどな!


愛子ちゃんはついでに「うちのお母さんが肩こりに使ってる薬なんだけど、睡眠薬の効果もあるんだって」って、そっちもぽちゃん って入れちまったんだ。


僕はその時ばかりは先輩がかわいそうになっちまったよ!


先輩は別にお酒に強いって言うわけじゃなかったらしい。あっさり眠っちまった。


それで僕はうまいこと先輩を座らせて、愛子ちゃんと無事にツーショットを撮ったんだ。


愛子ちゃんは大喜びさ。 愛子ちゃんの方には スマホの機能 ちょちょっと使って、普通の写真を渡したってわけ!


そして 先輩の引き出しの中にはこっそり僕が取った幽霊だらけの写真を入れた。


さあ これで先輩は恐ろしくて会社に行けないぞ!

なんてワクワクしていたのに、僕は先輩に呼び出されてしまった!

しかも社内の鍵までつけられる物置に!


しまった そんな部屋があること 全然考えてなかった!


先輩は言った。


「お前何だかわからないけど俺をからかっているな」


先輩は言った。


「 どういう悪戯かわからないけど、 たちの悪いことはやめてくれ」


先輩は言った。


「お前は何か知っているんじゃないか」


だんだんだんだん 先輩は気が狂ってきたように なっていって、とうとう


「 お前を殺してやる!!!!」


って 僕に襲撃しようと、かかってきたわけ。




──その時だった。


背中の幽霊が、先輩の口の中に次々と入ってった 先輩は かーっと苦しそうな 呻き声を上げている。


幽霊たちは 皆一斉にケケケケケケと笑い出したんだ!!


先輩は 最初は叫んでいたけどそのうち 一緒に笑い出した 幽霊も先輩も一斉にけけけけけけけけけけけって笑っていて、僕までおかしくなっちまいそうだったよ!!


そのまま先輩は笑ってるんだか叫んでるんだか、とにかく誰が見ても常軌を逸してるんだとわかる様子で、 みんなが 呆然とする 中会社をとびだしてしまった!


それから先輩は行方不明さ!


僕は何があったんだって色々聞かれるけど、 未だにうまく答えられないでいる。


愛子ちゃんなんか「あんたが何かやったんでしょう」って ひっぱたいてきやがった!!


それで、結局、今僕は 6回目の転職を検討中っていうわけさ。


 



お読みいただきありがとうございました!    

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