月夜の黒猫は、心を拐う

月ヶ瀬 杏

⋆⁺₊⋆ ☾ ⋆⁺₊⋆ ☁︎


「愛しいあなたのためならば、命などすこしも惜しくありません。よろこんで、あなたに捧げましょう。わたしのこの心臓を」

 満月の夜の森で、魔女は銀の剣を静かに振りあげました。

 月の光で剣はかがやき、魔女が美しく微笑みます。

「これで、いつもあなたのそばにいられます」

 そう言うと、魔女は月の魔力を宿した剣で左胸をひといきに貫いたのでした。


「孤独な魔女の物語」より一部抜粋

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