霽れを待つ。

空繰 巧

雨天



人は無くして初めてその価値を知る。

もう手に入らないものに縋ろうとする。


失くした青春を取り戻そうと、

潰えた希望を取り戻そうと、

捨ててしまった愛を取り返そうと。


手を伸ばす先のそれが偽物だったとしても、独り苦しみもがかずにはいられない。




いつも同じ夢を見る。

雨が全てを奪い去っていく夢、

溺れそうな虚ろの中炎が身体を蝕んでいく夢。



生と死の境界が曖昧になる刹那、



「おはよう、また今日も君は1人だ気分はどうだい?」



そう君はまた僕に拙い笑顔で問いかける。

こうして悪夢は覚め、僕はまた夢を見る。


終わることの無い虚を追う夢を。

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