魔法少女ソウル

@rainbowandsun

第1話 ふたりは魔法少女

内閣が承認した「八社鏡プロジェクト」がついに東京希望中学校で開始された。バベル博士が開発した魂転換技術を用い、生徒同士が互いの立場を体験するというこの計画は、賛否両論を巻き起こしていた。


「早乙女佳子さんと一ノ瀬太郎さんの交換を開始します」


高校1年生の早乙女佳子は魔法少女としてこの国を守る唯一の存在。彼女はプロジェクトに強く反対していたが、逃れる術はなかった。


「日本を離れよう!海外に友達がいるわ」

相棒のエンプ(白いウミウシ型生物)が提案するが、

「この国を守るのは私だけよ」


月光が部屋を照らす中、佳子は覚悟を決めた。明日から3ヶ月間、あの有名な不良・一ノ瀬太郎と体を交換することになる。


【翌日・プロジェクト開始】


「かかってこい!」


眩い光に包まれ、意識が切り替わる。佳子が目を覚ますと、自分の体はすでに一ノ瀬太郎のものになっていた。


「この頬の感触...もう私のものじゃない」

彼女は複雑な表情を浮かべる。


一方、一ノ瀬太郎はというと──


「おいおい、これは...」

自分の新しい体(佳子の体)を不思議そうに見つめていた。


「まあ、3ヶ月間か。面白くなりそうだ」

不良の風貌とは裏腹に、彼の目は好奇心に輝いていた。


【教室にて】


「なあ、お前本当に魔法少女なのか?」

クラスメイトが詰め寄る。


「...そうよ」

佳子(太郎の体)は苦々しそうに答える。


「証明してみろよ!」

「今は魔力が使えないの。体が違うから」


その時、校舎が激しく揺れた。


「なんだ!?」

窓の外には巨大な蜘蛛型モンスターが!


「まずい...あれはクラスAの危険度...」

佳子(太郎の体)の顔が強張る。


「逃げるぞ!」

「待って!あのモンスターを放っておいたら...」


佳子はエンプと目を合わせ、深く頷いた。


「仕方ない...特別措置だ!」


【魔法少女変身シーン】


「ルミナス・チェンジ!」


眩い光に包まれ、佳子(太郎の体)は魔法少女へと変身する。しかし──


「なんだこの姿...!?」

鏡に映ったのは、男の体ながらもセーラー服姿の異様な姿だった。


「見てる場合じゃない!行くぞ!」

エンプが急かす。


【モンスター戦闘シーン】


「光の矢!」

放たれた光線は蜘蛛の脚を一本切断するが──


「効かない...!?」


蜘蛛の反撃で壁に叩きつけられる佳子。窮地に陥ったその時...


「そこをどけ!」


駆けつけたのは、佳子の体を使う一ノ瀬太郎だった。


「お前...!?」

「見てろよ、魔法少女の正しい使い方を」


彼は佳子の体ながら、まるで格闘家のような身のこなしでモンスターに立ち向かう。


「そんな...私の体で...!」


【戦闘後】


「ふん、楽勝だったな」

一ノ瀬(佳子の体)が余裕の表情。


「...私の体を傷つけないでよ」

佳子(太郎の体)が不満そうに言う。


「心配するな。3ヶ月後には元通りだ」


二人は奇妙な共同生活を始めることになる。果たしてこのプロジェクトの真の目的は?そして3ヶ月後、二人の運命は──?

「...もう終わり?」


私は自分の手を見下ろした。細くて繊細なその指は、まるで高価な翡翠細工のようだった。こんな手は初めてだ...。


「罪深い...」

つい自分の新しい体に見とれてしまった。


「今後3ヶ月間、よろしくお願いします」

と隣に立つ少女に言うと、胸元の違和感が気になった。なんだか息苦しい...。


「この...膨らみは...」

思わず唾を飲み込む。まだ慣れない喉仏に触れながら、現実を受け止めた。


「少なくともB...いや、間違いなくCカップだ」

もしこれが元々の私だったら...。


「何考えてんですか?」

荒々しい声が耳元で響いた。


「な、何でもない!そもそもこんな企画、誰が考えたんだ?みんな逃げ出したくなるはずだ!」


「とにかく触るなよ。トラブルになったら、お前の目の前で死んでやる」

彼の声は氷のように冷たかった。


「わ、わかってるって!触らないから!」


その時、窓ガラスが割れる轟音が!


「なんだあれ!?」

外を見ると、巨大な白い蜘蛛が。いや、正確にはプラスチックのような不自然な白色で、黒い斑点が散らばっていた。外骨格に覆われたその姿は、明らかに普通の生物ではなかった。


教室はパニックに陥った。生徒たちが我先にと逃げ惑う中、白いウミウシが私の肩に現れた。


「太郎!魔法少女に変身だ!」


「え?俺が?」


「パスワードは『ルミナスチェンジ』!急げ!」


ウミウシの肌触りは蜘蛛に似ていて気味が悪い。でも今はそんなことを言っている場合じゃない。


「善子が魔法少女だなんて...」

彼女は私にこの任務を託した。たとえ見知らぬ他人でも、託されたものはやり遂げる―それが俺の流儀だ。


「変身方法は...このボタンを押して上に上げるんだっけ?」


深呼吸して覚悟を決める。


「ルミナス・チェンジ!」


スティックを空に向け、ボタンを押し上げた。次の瞬間、眩い光が私を包み込んだ―

1分以上経ったように感じたが、気がつくと逃げ惑う群衆はまだこんな感じだった。この変化はほんの一瞬で起こったように思えた。


変身の瞬間、全身が剥がされるような感覚に襲われた。温かいエネルギーが体中を駆け巡り、最終的に軽やかな魔法少女の衣装へと変化していく。いや、温かいというより...熱い流れのような感覚だ。気分が悪くなるほどだったが、ベッドで横になっている時のような安心感もあった。


変身が完了し、私は自分の姿を見下ろした。胸元には大きなリボン、手足はセーラー服のような白い衣装に包まれている。


「普通の服より洗濯しにくそう...」

つぶやいてから我に返る。今はそんなことを考えている場合じゃない。


突然、地響きとともに校舎が揺れた。最初は地震かと思ったが、すぐにそれが巨大蜘蛛の仕業だとわかった。


「本当に...怖い...」

でも、もう逃げるわけにはいかない!


勇気を振り絞って魔法の杖を握り締め、蜘蛛と対峙する。


「次はどうすれば...?」

弱々しく叫ぶ私に、エンプが答えた。

「魔力を注入し続けるんだ!杖から波動が出るぞ!」


集中して杖を見つめると、確かに光が輝き始めた。

「はっ!」

杖から放たれた光線は蜘蛛に命中したが...。


「効いてない...?」

皮膚が少し焦げた程度で、蜘蛛は平然としていた。


「くそっ...これが最強の攻撃なのか...」

善子ならどうするだろう...。


「ああああ!」

今度は杖から眩い光を放ち、手に収束させた。光はやがてまばゆいライトセーバーへと変化する。


「これでいくぞ!」

無謀と知りつつ、蜘蛛めがけて突進した。狙いは関節だ!


一閃。蜘蛛の足が一本切断された。しかし8本ある足の1本が折れた程度では動きが止まらない。


「粘り強く...」


その瞬間、蜘蛛は口から粘着質の糸を吐き出した。白い粘液の塊が直撃し、私は教室の壁に叩きつけられた。


「痛い...!」

この姿で壁に張り付く様は、傍から見ればエロティックな光景だろう...。顔まで覆われて、話すことも呼吸もできない。


「終わりか...」


しかし蜘蛛もよろめいていた。バランスを崩している隙に...。


「エンプ!どうすれば...!」


「全身に魔力を集中させろ!糸を溶かせるはずだ!」


目を閉じて精神統一。体中に温かい電流が走るのを感じた。これが...魔法の力か?


突然、全身が眩い光に包まれた。蜘蛛の糸は粉々に砕け、瓦礫の中から這い出る。


「太郎!」

エンプが叫んだ。

「その形態...善子が一度だけ使ったことがある!長くは持たない!急げ!」


再び杖を握る。今度は違う。全身に力がみなぎっている。


「魔力を込めて...究極の一撃を...」


しかしその時、荒木が突然走り出した。


一歩、二歩...足跡が光り始める。三歩目で跳躍し、空中で回転。ピンクの光が炸裂した!


「ハァァァ!」

彼女の蹴りが蜘蛛に直撃。亀裂が走り、そこから眩い光が漏れ出す。


蜘蛛は抵抗虚しく、爆発四散した。


煙が晴れた後、荒木は涼しい顔で言った。

「あの爺さん杖は面倒すぎる。私は拳と蹴りで解決する」


変身を解くと、衣装が粒子となって消え、学生服の姿に戻った。


「次に行こう」

瓦礫から鞄を拾い上げ、肩にかける。


「これからは、よろしくな。」


「ただいま!」


善子の家の玄関で声を上げると、ランドセルの中のエンプが小さく動いた。今日からここで生活するのだ。


「ヤサカミ計画のため、体の持ち主の家に滞在することになりました」

と学校から連絡が来ていた。つまり俺は善子の部屋で暮らすことになる。


「犬小屋みたいな所に戻りたいのか?」

と聞かれたが、あそこはとても人間が住める環境じゃない。


階段を上がろうとした時、ふと振り返って父親に尋ねた。

「善子の両親には...あ、いや、俺の両親には連絡した?」


父親の表情が曇った。

「善子は...幼い頃に飛行機事故で両親を亡くしたんだ。祖母に育てられたが、彼女も2年前に...」


胸が締め付けられるような感覚がした。

「そうだったのか...」


すると突然、善子の母親が抱きしめてきた。

「たとえ3ヶ月だけでも、私はあなたのお母さんよ!終わった後も、いつでも戻ってきていいの!」


その温もりに、なぜか涙がこぼれそうになった。

「お母さん...寂しかった...」


夜の寝場所について話し合うと、母親が提案した。

「一緒の部屋で寝たら?」


「いやっ!」

二人同時に叫んでしまった。


俺は手を上げて説明した。

「落ち着いて。今、俺は善子の体の中にいる。善子だって俺の体で変なことはしないだろう?」


「好意が芽生えたらどうする?」

父親が心配そうに聞く。


「この状況で恋愛なんて...」

首を振りながら、

「まずは善子本人を呼んでくれないか?」


善子の視点 - 千代田区の廃屋にて


「ここ...が彼の家?」


目の前に広がるのは、ボロボロのトタン小屋だった。風が吹くたびにギシギシと音を立て、今にも崩れ落ちそうだ。


スズメが電線から逃げていく音だけが響く。壁は変色した黄色で、雨漏り防止の段ボールが貼られていた。


「こんなところで...暮らしてたの?」


スマホに表示されたメモを見る。

《両親死亡・保護者も他界・現在独居》


胸が締め付けられる。都会の片隅に、こんなにも荒んだ場所が...。


「あの人は...私の体で変なことしてないわよね?」

ふと不安がよぎる。両親が見守ってるはずだし、エンプもつけておいたけど...。


ちょうど外出しようとした時、電話が鳴った。画面には《一ノ瀬太郎》と表示されている。


「戻ってきてくれ。あそこは住む場所じゃない」

彼の声は意外にも優しかった。


[善子の自室にて]


「ふう...」

ベッドに腰かけ、自分の新しい体を確認する。がっしりとした腕、広い肩...。


「あの人、私の体をちゃんと...」


パッと顔が熱くなる。服を脱ぎ始めようとした瞬間、


「ちょっと待った!」

窓からエンプが飛び込んできた。


「なに?エンプじゃない」

「汗だらけでしょ!魔法戦闘服は汚れないの!」


「ただシャワー浴びて寝たいだけだ...」

本当に疲れきっていた。今までの戦いとは違う。命の危険を感じる初めての体験だった。


「魔法少女って...結局何なの?」

エンプは咳払いして説明を始めた。


「私たちデワフ族は地下生物。自然災害と戦うため、人間の少女に魔力を与えて...」


「待って、地下生物?!」

思わず声が裏返る。


「70年ほど前から、あのモンスターが増え始めた。善子は日本を守る選ばれし戦士だった」


「それが今は...私に?」

重い責任を感じながら、エンプの目をじっと見つめた。


「あなたなら...善子を超えられるかもしれない」

エンプの声には確信が込められていた。


「えっと...何してるの?どうして服を脱いでるの?」


善子がドアを開けた瞬間、私はシャツを脱ぎかけていた。彼女は目を覆いながらも、指の隙間から覗いているのがわかった。


「今日誰かに会うの?パジャマじゃダメ?」

「まだ着替えてないってば!」


私がシャツを脱ごうとすると、善子が急いで私の手を押さえた。

「誰に会うんだよ?」

「君には関係ないだろ?知り合いでもないし」


「いや、ついていく。危ない感じがする」

「追いかけられても困るんだけど」


「追跡の経験ないから心配なの」

「あーもう...わかったよ。でも着替えさせてくれ」


「服は自分で選ぶ!」

「はいはい...」


仕方なく手を離す善子。私はクローゼットを開けた。


「言っとくけど、変な服はないから。全部シンプルなの」

「大丈夫だって。これでいい」


黒のトップスとジーンズを選んだ。シャツには「MUSIC」と大きくプリントされていた。


「...趣味いいじゃん」

「適当に選んだだけ」


善子は私の背中を叩き、向きを変えさせた。次の瞬間、布で目隠しされ、あっという間に着替えが終わっていた。


「はい、完了」

「速っ!ちょっと見ていい?」


鏡に映ったのは、シンプルな服を着た善子の姿。どんな服でも似合う美しさが逆に恥ずかしかった。


「じゃ、行ってくる」

顔を赤らめながら、私はドアを飛び出した。


[公園にて]


昨日は金曜日で、今日は土曜日。いつもなら仲間と遊ぶ日だ。


「おい、太郎兄貴?」

タクヤが怪訝な顔で近づいてきた。


「ああ、俺だよ」

「証明してみろよ」


IDカードを見せると、

「タクヤの弟のペニスの長さも知ってる。トイレでちょっと見たことある」


胸に手を当て、こめかみを叩いて覚えてるアピール。


「わかったわかった、本物だって信じるよ」


タクヤをはじめ、みんなの反応は予想以上だった。でも驚きよりも興奮が勝っていた。


「なんだよそれ」

「女の子らしくない発言だな...ってタクヤ、まだ彼女いないんだっけ?」


「ちょっと!どういう意味だ!」


いつものようにタクヤが秀吉の襟首をつかみ、小競り合いが始まった。でもすぐに仲直りするのがこの連中のいいところだ。


騒がしい日常がまた始まる。これが俺たちの楽しみ方なんだ。


**「ねえ、太郎兄さん...」**


拓也が照れくさそうに近づいてきた。いつもは参加しない仲間たちも、珍しそうに私たちを眺めている。


「今のあなた...すごく可愛いよ」

「この子の名前は善子。早乙女善子。特別なところなんて何もない普通の女の子さ」


「こんな美人なのに、誰も口説かないなんてありえないでしょ?」

「性格が悪いからじゃないかな」


拓也が意味深な笑みを浮かべる。

「で...体の感じはどう?」


「感じる?病気じゃないんだから」

「いや、その...触った感じとか」


「バカ言うな。全部触ったんだろう?」

「ち、違うよ!」拓也の顔が真っ赤に。


私は思わず笑ってしまった。この弟分、意外と純情なんだな。


「お前、まだ童貞なのか?前にエロ本持ってきた時も見ようとしなかったし...」

「そ、それは...!」


私が後頭部を軽く叩くと、拓也は俯いて黙ってしまった。


(...可愛いやつだ)


ふと、自分の考えに驚く。この体の影響か?それとも元々の私の好みなのか...


「ところで、その体で本当に戦えるの?」

拓也が心配そうに聞く。


「大丈夫だ。やり方があるから」


その時、バイクのエンジン音が近づいてきた。ボロボロの革ジャンを着た暴走族の一団だ。


「一ノ瀬太郎...思ってたより可愛いじゃねえか」

「だから?」


「ボスの命令だ。お前の組を潰す。ま、今は女の体らしいがな!」


私は大笑いした。「たったこれだけの人数で?」


男たちがナイフを研ぎ始める。背後には数十人の手下が並んでいる。


「待て」私は手を挙げた。「決闘だ。俺が勝ったら、元の縄張り通りにする」


「負けたら?」


「じゃあ、好きにしろ」


「兄貴!何考えてるんだ!」仲間たちが慌てる。


「心配するな。この体、意外と強いんだ」


存在しない上腕二頭筋を叩いて見せると、リュックの中のエンプサがもぞもぞと動いた。


「大丈夫、すぐ終わるから」


私はリュックを背負い直し、戦場へと歩み出した。この小さな体に宿る力を見せてやる。

「では皆さん、位置について...」


緊張が走る空気の中、私は相手と向き合った。領土と名誉をかけた一対一の決闘が始まろうとしている。


「準備、スタート、ゴー!」


敵は竹刀を振りかざし、私の頭めがけて襲いかかってきた。


「待て!これじゃ人が死ぬだろ!」

「俺たちはただの不良だ!殺し合いじゃねえ!」


しかし彼の攻撃は止まらない。今度は縦に振り下ろしてくる。


「背骨を折る気か!?」


私は素早く回避し、間合いを詰めた。この体は驚くほど敏捷で、武術の訓練を受けたかのようだ。


そして──


「ぐはっ!」


完璧なタイミングで金的蹴りを決めた。


「今日からお前は宦官だ」

痛みにのた打ち回る相手を尻目に、私は木刀を水平に構えた。


「どうだ?まだ続けるか?」


「...撤退する」


彼らは悟ったようだ。体は変わっても、中身はあの一ノ瀬太郎なのだと。


「かっこいい...兄貴」


[一方、敵のアジトでは]


薄暗いクラブハウスで、色鮮やかな革ジャンの男がタバコをくゆらせていた。


「女になった太郎に負けただと?」

「はい。でも情報は得ました」

「交換相手は早乙女良子です」


「...驚きじゃねえな」

「なぜですか?」


「早乙女良子はテコンドーの元全国チャンピオンだ。中学で引退したが...成績は別に良くないらしい」


「どうしてそんなに...?」

「あの子は俺の妹の親友なんだ」


男は煙を吐きながら呟いた。

「...面白くなってきたな」

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