第18話次席表と甘いケーキのようなケンカ
「……ねぇ、ここさ、私のおばといとこ一緒にしてもいい?」
遥がペンを片手に、式の席次表を前に眉をひそめている。
「うーん……それ、たしかそのいとこ、あんまりおばさんと仲よくないんじゃなかったっけ?」
「うっ……そうだった……!」
ふたりでリビングのテーブルに並んで座りながら、式の準備に取りかかる毎日。
幸せなはずなのに──なぜだろう、この紙の前では何度もため息が出る。
「じゃあこっち側に移動させて……でも、今度はバランスが……」
「もう少し簡単に考えてもいいんじゃない?」
「え? なにそれ、私は真剣に──」
「違う違う、責めてるわけじゃないよ? ただ、あんまり悩みすぎて疲れちゃうかなって」
「……それは、わかってるけど……」
少し空気が固まる。
駿がふと立ち上がって、冷蔵庫からジュースを2本取り出した。
「休憩しよう。ほら、甘いものも一緒に」
「……」
遥はぷいっとそっぽを向いていたけれど、差し出されたジュースを受け取って、黙って一口。
「……なんで、そんなに柔らかいの?」
「遥が硬すぎるから、バランス取ってるんだよ」
「……ちょっと、それ……うまいこと言ったつもり?」
「うまいでしょ?」
「……むかつく……でも好き」
「俺も、今ちょっと怒られてるけど、好き」
お互い笑って、ちょっと頬を赤らめて。
ケンカというより、愛の確認作業みたいなやりとりだった。
「……次は、ケーキの試食だよ」
「うん。味でケンカしないようにしような」
「フラグ立てるのやめて」
そんなやりとりが、ふたりらしい一日だった。
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