破壊神の後悔と贖罪

飯田沢うま男

第1章 虚無

第1話 破壊神

 とある世界──その残滓と言うべきか。そこには、果てしない荒野を歩き続ける男の姿があった。


 彼は破壊神。数百年前、無限の力を手に入れた彼は、均衡を保っていた世界の秩序を無残にも崩壊させ、幾億もの命を破滅へと追いやった。


 その時、唯一彼を止めようと立ちはだかったのは創造神だった。世界に生命と調和をもたらしていた創造神は、破壊神の暴走を止めるべく彼に呼びかけ、共に在ることの意義を説こうとした。


 だが、破壊神の耳にはその言葉は届かず、彼はただその力を振るい続け、戦いを挑んだ。たった数時間──その間に、この世界の命運が絶たれた。混沌とした闇と秩序の光が交錯する激闘の余波によって数多の命が失われた上、敗北した創造神はその命を散らした。


 創造神が消えた世界の傷跡は修復されることなく、何一つ生まれることのない虚無が広がっていった。今や破壊神は、荒廃しきった世界を歩き続けている。彼の周囲には、かつて命が息づいていた気配すらなく、ただ天と地が延々と広がるのみ。誰もいない。何もない。


 破壊神は求めていた力を得た代償として、孤独と虚無、そして絶望におびやかされることとなった。そして今、彼は自分さえも見失い、意味も理由も見出せないまま歩き続けている。彼の瞳に宿るのは、消えたものへの哀惜か、それとも自らの運命への諦観か。その先にあるものは、果たして──

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