『110年もダンジョンで生き延びたら、死んだことにされていた件』
@tubotuboex
第1話「奈落への逃避行」
深夜の学校の屋上。冷たい風が頬を撫でる中、俺はフェンスの向こうに立っていた。
誰もいない。けれど、心にはざらりとした痛みがこびりついている。
名前を呼ばれるたびに嘲笑され、家庭では父の拳と母の無視に怯える日々。逃げ場なんてなかった。いや――たった一人だけ、彼女を除いては。
「君は、消えちゃだめだよ」
かつて、あの瞳がそう言ってくれた。唯一、俺を人として見てくれた存在。けれど、彼女の言葉すら、もう俺を止められなかった。
俺は決めていた。すべてを捨てる覚悟で、あのダンジョンに飛び込む。
誰も近づかない禁忌の場所。廃れた神社の裏手にある、古びた鳥居。その奥にぽっかりと口を開けた亀裂。あそこが俺の終着点であり、始まりだ。
そして――俺は落ちた。深く、深く、闇の底へ。
光も音も失われた世界。けれど、死は訪れなかった。
代わりに、俺の中で“何か”が目を覚ました。
《スキル【影縫い】が発動しました》
その瞬間、暗闇の中に一本の糸が浮かび上がる。影に縫いつけるように敵を縛る力。逃げるためではない。生き延びるための力。
――俺は、ここで生きる。
そして、必ず“外”に戻る。
#3話から文字数を増やしていきます
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