最終話 信じ続けた未来
これまで主要な街を旅してきた四人は、旅のきっかけを作った集落を数年ぶりに訪ねることにした。しかし、既に集落は無くなっており、代わりに新たな街が築かれていた。
アルフは落胆した様子を隠せないまま呟く。「まあ、数年も経てばそうなるか……あの集落の人達は元気にしているだろうか……?」
アビーも「きっと大丈夫だよ。集落が無くなっただけで皆生きてるはず……。」と不安を払拭するように周囲を見渡す。
ギルは「そうだ。なんなら皆この街で暮らしてる可能性もある。」と冗談交じりにアルフの肩を叩きながら言った。
そして、ローナが「ありえるわね。せっかくここまで来たもの、行ってみましょう。」と促し、四人は街へ足を踏み入れた。
アルフたちは新たに築かれた街の中を歩きながら、集落の人々の面影を探した。街は以前の集落とは異なり、賑わいと活気に満ちていた。整然と並ぶ家々、広場で行われる市場、そして楽しそうに話す住民たち。四人はこの街が平和であることに安堵しながらも、かつての集落の面影を感じられず、少し物寂しさを覚えていた。
アルフは「この街の雰囲気、確かに素晴らしいが……あの静かで穏やかな集落とはだいぶ違うな」と言いながら、周囲を見渡した。
アビーは「でも、こうして街が発展したのは、もしかしたら集落の人たちが築いた信頼と絆が基盤になったからかもしれないよ」と言って微笑んだ。
ギルも「確かにな。街が大きくなるってことは、それだけ多くの人が集まり、助け合って生きてるってことだ。俺たちが訪れた街も、こんなふうに発展してくれるといいな」と言いながら、前を歩く人々を見つめた。
そんな時、ローナが遠くに見覚えのある人物を見つけた。「あれ、もしかして……?」と呟き、彼女はその人物の方へ駆け寄った。アルフたちもそれに続いた。
近づいてみると、その人物はかつての集落で彼らを迎え入れてくれた男性だった。彼は少し年を取ってはいたが、相変わらず穏やかな笑顔を浮かべていた。
彼は四人に気づき、驚いた様子で「おっ、これは懐かしい顔ぶれだね。まさかまた会えるとは思わなかったよ。」と言った後、笑みを浮かべた。
アルフたちも思わず笑みを浮かべ、男性に近況を尋ねた。彼は街の発展について語りながら、集落の人々が新たな生活を築き、今もこの街で共に暮らしていることを教えてくれた。
アルフは「そうか、皆が元気で暮らしているなら何よりだ」と安心した様子で言った。
男性は頷き、「そうだよ、君たちが広めてくれた『人を信じること』が、この街を支え、発展させてきた。皆がその教えを守り、共に助け合ってるからこそ、ここまで発展したんだよ。」と感謝を述べた。
その言葉に四人は胸を熱くし、これまでの旅の成果がここにも根付いていることを実感した。彼らは男性としばらく昔話に花を咲かせた後、街の中を歩き回り、かつての集落の仲間たちや、かつて分断されていた街から旅に出ていたレオと再会を果たした。
「皆さん、お久しぶりです。僕は旅を続けるうちに、自分はやはり統治者の器ではないと感じたんです。それでも、僕に何か出来ることはないかと考えた結果、皆さんが教えてくれた『人を信じること』の大切さを伝える旅を続けてきました。」
アルフはレオが彼なりの成長を遂げていたことに感嘆の声を上げた。
「レオ、君はよくやっているよ。俺たちの他にも同じことをやってくれている人がいるのは心強い。」
ギルがレオの肩を叩いて続けた。
「お前もあの頃から随分立派になったな。……ところで、お前の街の外は盗賊ばかりだったか?」
レオは苦笑しながら答えた。
「やめてくださいよ。どうしてあの言葉をまだ覚えてるんですか?」
アビーとローナはその様子を見て笑い合った。
レオと別れ、広場でくつろいでいる時、「これで良かったんだな……。」とアルフが呟いた。
その言葉に、アビーが微笑んで応える。「うん。でも、この国ならこれからもっと明るくなれるよ。」
ギルが空を見上げながら言った。「ああ、俺たちの旅が終わっても、この流れは続いていくはずだ。」
ローナも頷き、「その通りよ。あとは、これまで出会った人たちが未来を作ってくれるわ。」と付け加えた。
四人は穏やかな気持ちで街を離れ、再び旅の道へと足を運んだ。これからどんな道が待っているのか分からないが、彼らの心には確かな達成感と、新たな挑戦への希望が満ちていた。
この旅でアルフたちが蒔いた「信じること」の種は、確実にフレトス全土に広がり、新たな光を生み出していくだろう。
ある旅人たちの軌跡 〜言葉で広がる街灯り〜 飯田沢うま男 @beaf_takai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます