第10話 歩むべき道

 盗賊団と共に街へ向かう途中、盗賊リーダーのバイルがギルに尋ねた。

「俺たちは数年に渡ってこの街を襲ってきた……今更心を入れ替えたとして、そんな俺たちを街の住民が信じるのか?」


 ギルは険しい表情で答えた。

「まあ、それは難しいだろう。だが、信頼というものは時間と努力を費やして、根気強く勝ち取るしかないんだ。」


 さらに、アルフたちと共に挑んでいる旅についても語った。

「それは、俺たちが広めようとしている人を信じる生き方も同じだ。このフレトスに生きる人々は心が荒んでしまっている。そんな彼らに『人を信じることは素晴らしい』と説いたところで簡単には信じまい。彼らの心が解きほぐされるまで行動で示さなければならないんだ。」


 バイルはギルの言葉に深く頷き、重い口調で言った。「そうだな……俺たちは今まで力で奪ってきた。だからこそ、信頼を取り戻すには、その倍以上の努力が必要になる。だが、それでもやるしかないんだな。」


 ギルはバイルの決意を感じ取り、優しく微笑んだ。「その通りだ。俺たちも同じ道を歩んでいる。信頼を築くためには、過去の過ちを背負いながら、それを乗り越えていくしかない。」


 バイルは少し沈黙した後、静かに続けた。「それにしても、あんたたちが挑んでいる旅は壮大だな。俺たちがやってきたことを考えると、今さら信じるとか、穏やかな生き方を広めるなんて、まるで夢物語のように思える。」


 アルフがその言葉を受け取り、穏やかに話し始めた。「確かに、夢物語のように聞こえるかもしれないな。だが、俺たちは夢を見ているわけじゃない。現実を変えるために行動しているんだ。最初は小さなことからしか始められないが、その積み重ねがやがて大きな変化を生むんだと信じている。」


 アビーも続けて言った。「私たちは、この旅の中で出会った人々に支えられ、そして少しずつでも信じてもらえるようになってきた。だから、あなたたちだってきっと信じてもらえるようになるよ。ただ、時間がかかるだけ。」


 バイルは少し考え込みながら、周りの盗賊たちを見渡した。彼らもまた、険しい顔をしていたが、どこか希望の光を見出しているように見えた。


「わかった。俺たちは時間をかけてでも、街の人々に自分たちの変化を見せる。そのために、お前たちのように真摯に努力してみるよ。」バイルはそう言って、再び歩き出した。


 四人と盗賊団は、決意を新たにして街へと向かった。彼らは過去の罪を償い、街を守る存在となるために、自らの行動で信頼を築いていく覚悟を固めていた。


 そして、街が見え始めた頃、アルフは静かに呟いた。「これが始まりだ。この街の荒んだ心を癒す戦いが、ここから始まる。」


 ギル、ローナ、アビー、そして盗賊団もその言葉を胸に、街の未来を信じて歩みを進めた。どれほど困難な道のりであっても、彼らは一歩一歩、確実に進んでいく決意を固めていた。

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