第7話 優しさの火種

「よし、準備は出来てるみたいだな。……アビー、ギル、ローナ。これからの旅は困難が待ち構えているに違いない。それでも、この集落の人達が安心して暮らせるように、この国を良くしていこう。」


 四人は互いに頷き合い、集落から出発した。道中は穏やかで、鳥のさえずりが聞こえる静かな風景が広がっていたが、彼らの心にはこれからの旅路に待ち受ける困難への覚悟が刻まれていた。


 やがて、先日アルフとアビーが嫌な思いをした街が視界に入ってきた。街の外観は以前と変わらず、閉鎖的で冷たい雰囲気が漂っていた。しかし、四人の心には希望が燃えていた。


「ここが、まず最初の試練だな。」アルフは静かに言いながら、街の門を見つめた。「俺たちはこの街で人々に本当の信頼と平和を教えるんだ。」


 アビーは力強く頷き、「ここで成功すれば、他の街でも同じようにできるはずだよ。信じる心を広げていこう。」と決意を新たにした。


 ギルは街の重苦しい空気を感じながら、「人々は疑心暗鬼に囚われ、他人を信じることを忘れてしまっている。だが、それを乗り越えさせるために、まず俺たちが信じる姿勢を見せないとな。」と静かに決意を表明した。


 ローナもその言葉に共感し、「そうね。まずはあたしたちが手本を見せなきゃ。この街の人たちに、信じることがどれだけ大切か、そしてそれがどれだけ力になるかを教えましょう。」と微笑んで言った。


 四人は覚悟を決め、ゆっくりと街へと足を踏み入れた。そこに待ち受けるのは、厳しい現実かもしれない。しかし、彼らは互いに支え合い、困難を乗り越え、この荒んだ国に少しでも希望をもたらすために前進することを選んだ。


 街の人々は最初、四人を冷たい視線で見つめていた。だが、アルフたちは諦めることなく、人々と向き合い、言葉を交わし、誠意を尽くした。彼らが持つ信頼と希望の灯が、少しずつ、しかし確実に街の人々の心に温もりをもたらしていった。


 それは小さな一歩かもしれないが、フレトス全土に広がる波紋となるはずだと、四人は信じて疑わなかった。彼らの旅はまだ始まったばかりだが、心の中には揺るぎない決意が根付いていた。

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