第2章 静かに、熱く

第5話 夜明けの兆し

 夜明け前、アルフは集落の外れで考え事をしていた。


「ここで彼らを外敵から守りながら暮らしていくのも捨てがたいが、人を信じること、そして穏やかな暮らしの素晴らしさを広め、このフレトスに平和をもたらしたい気持ちもある……。」


 悩み続けるアルフの背後から、野盗の男、ギルが声をかけてきた。

「アルフ、そこで何をしている?」


 アルフは「ああ……お前か。いや、少し考え事をしていた。この集落の人々の穏やかな暮らしを守りたいと思うが、その一方でこういった生き方の素晴らしさを広めたいとも思っていてな……。」


 ギルはアルフの言葉に耳を傾けながら、静かに隣に立った。彼はしばらく無言で地平線の彼方を見つめていたが、やがてゆっくりと口を開いた。


「俺たちがこうして久しぶりに穏やかに過ごせるのも、この集落の人たちのおかげだ。ここに来る前は、他人を信じるなど考えたこともなかった。だが、ここで過ごすうちに、それがどれだけ大切なことか少しだけ分かった気がする。」


 ギルの言葉に、アルフは静かに頷いた。「そうだな。俺もここに来て、信じることの力を改めて感じたよ。しかし、俺たちがここで守るだけでは、この集落もいずれ外の荒んだ世界に飲み込まれてしまうかもしれない。だから、この平和を広げることができれば、フレトス全体が少しでも変わるんじゃないかって思うんだ。」


 ギルは腕を組んで、考え込むようにうつむいた。「確かに、俺たちがこの集落に留まっても、それだけでは根本的な解決にはならないかもしれないな……。」


 アルフはギルの表情を見ながら、続けた。「お前も見ただろう、この集落の人たちの暮らし。彼らは互いに助け合い、信じ合って生きている。この生き方が、フレトス全土に広がれば、もっと多くの人々が救われるはずだ。」


 ギルは深く息を吐き、アルフを真剣な目で見つめた。「お前がその道を選ぶなら、俺も行こう。俺には、誰かを救うなんて大それたことはまだできないかもしれないが、この集落で得たものを失いたくないからな。」


 その言葉に、アルフの胸には感謝と決意が混じった感情が広がった。「ありがとう、ギル。お前となら、どんな困難が待ち受けていようと乗り越えられる気がする。このこと、朝になったらアビーたちにも伝えよう。」


 二人はしばらくの間、静かな朝の風に吹かれながら、遠くの地平線を見つめていた。これからの旅は険しくなるだろうが、アルフとギルは新たな希望を胸に抱き、再び歩き出す準備を始めた。彼らはこの集落を出発点として、フレトスに平和を広げるための旅に出ることを決意したのだった。

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