たったの3
「よし!これで説明は終わり!」
私は勢いよく立ち上がり、思いきっり体を伸ばした。
そして、体を勢いよくソファに沈めた。
「さぁ、ここからは芦渡さんを脅していたXについて話し合おう。」
そう言って手を叩いた。
そんな私の姿を見て、皆は白い目で見てきたが気にしないことにした。
私は前田さんのほうに向いて問いかけた。
「前田くん、山本の関係者で脅されていたとかないの?」
前田さんは少し苦虫を嚙み潰して答えた。
「ないとは言いきれないですね。」
「例えば?」
「そもそも、脅されていたっていう証拠の写真なんかがないんですよ。昔の仲間を尋ねて山本の怪しいところを教えてもらおうとしたんですが、皆一様に『怪しいところがあるが本当かどうか分からない。』って答えるんです。だから、山本の部屋を捜索しようとしたんですがね、部屋を隈なく探したんですけど何も発見できませんでした。」
「壁の中も調べたのか?確かそういう機械があったはずだが?」
「大川さん!この子たちは一応、学生なんですよ。あれは使うのに大変な書類審査や資格が要りますから学生では使うことは不可能ですよ。」
「そもそも、月一で業者が点検するから、そんなところには隠しませんよ。」
自分の意見が徹底的に潰されたのが応えたのか大川さんはシュンとしてしまった。
私は少し可哀そうだと思いながら、口を開いた。
「あるとしたら何処かの鍵付きロッカーの中だな。」
「そうでしょうね。」「そうだろうな。」
皆が頷いた。
「そういえば。」
ショックから立ち直った大川さんが声を発した。
「俺たちのほうも山本さんの動きを追っていたんだが、一週間前の土曜日に確か山本の相棒の佐川さんと言い争っていたという証言が出てきた。」
「なに! 続けてくれ。」
あまりの驚きに大声を出して立ち上がってしまったが静かに座りなおして、話の続きを促した。
「続けるぞ。一応、店内にあった防犯カメラで確認したから裏付けは取ってある。店の店員に聞いた話だと最初は静かだったのが佐川の方が急に叫びだしたらしくてな。最後のほうは『殺してやる』なんて叫んでいたらしい。その場はどうにか収まったらしいがあと少しで殺傷沙汰に及んだんじゃないかとそこの店員はヒヤヒヤしたそうだ。」
「ということは佐川さんが芦渡さんに手紙を送ったXなんですかね?」
前田さんは至極真っ当な疑問を口にする。
「そう、決めつけるのは早いぞ、前田。もう少し考えるべきだ。」
「井田先輩は考えすぎな気もしますけど、山本には潜在的な敵が多そうですからね。そう簡単には分りませんよね。」
私は意を決したように口を開いた。
「よし!井田は学園都市内のカメラで山本の動きを追ってくれ。前田は私と一緒に佐川に問い詰めに行こう。刑事さん達はなにかありますか?」
すると、狗丘さんは何か言いづらそうにモジモジしたかと思うと口を開いた。
「実は私たちもクロウの捜査の応援に駆り出されることになりまして、今回の事件の捜査が片手間になってしまう可能性があるんです。」
「大丈夫ですよ。今しているのは犯人が捕まって一件落着している事件の埃をこねくり回しているだけですから。ここからは警察の力を使わなくても大丈夫です。」
「助かります。そういえば、山本さんが事件前に身に着けていたカチューシャは劇場から発見されませんでした。では、私たちはこれで。」
狗丘さんと大川さんは立ち上がって応接室から出ていこうとした。
「そういえば、確か補助事務員の小僧が二人で芦渡さんに会いに来ていたぞ。」
大川さんが振り返って、お弟分の情報をくれた。
私は前田さんに肩を揺らされるまでの数秒間、応接室の扉を凝視していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます