タピオカproject「天命」ストーリー版

ぺなにゆ

桜嶺編(前半)

第1話 世界終わる

イザナギ「世界終わる」

「え、まじ? おれ、小学生なんだけど」

イザナギ「転生者、お前が最後の希望だ」

――転生直後、謎の森。

「……え? マジで転生してる?え、てかなんか身体軽……」


目を開けると森だった。クソ暑いし、虫うるさいし、ケツ痛い。

でもそれより、もっと気になる違和感があった。


「……え、胸ある。いやいや、ねぇよな?あるわコレ、ちょ、なにコレ」

「うわあああああああああああああああ!!!!」


パンツを覗く。

叫ぶ。


「おれのぉぉぉ……一人息子がぁぁぁああああ!?!?」


はい、女体化してました。  

「やっと森から出れたけど……まだ俺、女だよな?マジどうしよう」

頭の中でぐるぐる考えながら歩く。しかし、しばらく歩いているうちに、どうやら町らしき場所が見えてきた。


「お、なんかあるじゃん。あそこに行って、なんか……どうにかなるかもしれん」

とはいえ、周囲には見慣れない建物が立ち並んでいる。どれも古くて立派な建物だ。まるで時代が違うみたいな建築様式。これが異世界の特徴ってやつだろうか。


「ちょっと、マジでどうすればいいんだよ……」

行く先に、ひときわ目立つ大きな屋敷が見えた。屋敷というか、城みたいな建物だ。まさに、この世界の支配者の家とでも呼ぶべき感じの威厳が漂っている。


「うわ、超でけぇな…でも、ここ行くしかねぇよな。だって他に行くとこないし」

足を進める。

心の中で何度も「俺はまだ男だよな?」と自問しながら、その場所に向かって歩いた。

屋敷の前に着いた少年(?)は、ちょっと戸惑いながらもドアの前に立つ。

「うわ、すごいなぁ。豪華すぎだろ。これ、誰の家だよ…」

ドアを押すと、案外あっさり開いた。


中に入ると、広い玄関が広がっていて、足音が響く。

どこからか人の気配を感じる。


「え、もしかして誰かいるのか?」

自分が女体化しているせいで、普段だったらなかった緊張感が急に芽生える。

「……なんか嫌な予感がする」


すると、奥から歩いてくる人物が見えた。

その人物は、頭に金色の髪を持ち、高貴な雰囲気を放つ女っぽい男だった。

「お嬢ちゃん1人でこんな所に来るなんて、ちょっと無謀じゃない?」

少女はその言葉に驚き、すぐに反応した。


「お、おい! 俺は別にお嬢ちゃんじゃねぇし!」

だが、エクレールはにやりと笑って、肩をすくめる。


「ふーん、そうか。じゃあ、おじさんの家に泊めてあげよっか?」

そのセリフに、少女は思わず背筋が凍った。

「はぁ?」と短く呟いた少女は、しばらくその場で硬直する。


エクレールはさらに調子に乗って、いたずらっぽく言葉を続ける。

「まあ、心配しなくていいよ。おじさん、優しいから。お前みたいなかわいい子、放っておけないんだよね。」

少女は、これが冗談だとしてもとても不快であることに気づき、口を開いた。


「おい、待て! 何言ってんだ、お前! 俺はまだガキだっての!」

「ガキ?」

エクレールは面白そうに眉を上げた。「それが本当に君の言いたいこと? まあ、こっちの世界じゃ、年齢なんてどうでもいいけどね。」


少女は再び焦った。

「お前、マジでどうなってんだ……?」

心の中で呆れ果てながらも、外面では何とか平静を保つ。


エクレールはニヤニヤしながら、さらに進んだ。


「でもまあ、泊まるなら何でも好きにしな。 おじさんの家は広いし、どうせ今は暇だしな。」

少女は、あまりにも無茶な提案に「絶対にこいつ、全然普通じゃねぇ!」と思うが、それでもこれが一時的な避難場所だと自分を納得させる。


「まあいいけどさ……」

とりあえず、エクレールの家で過ごすことを決めた少女だが、心の中で再び「こんな奴が俺をどうするつもりなんだ……?」と不安が募った。

ぺに男がエクレールの家に足を踏み入れ、エクレールがその場でゆっくりと歩きながら言った。


「まぁ、君がどんな小僧なのかはわからんが、とりあえずおじさんの家で落ち着いてくれ」

ぺに男はその言葉に戸惑いを感じたが、そんなことを言っている場合ではない。


エクレールが足を止め、ふとぺに男を見つめた。

その冷徹な目が、どこか探るようにじっとぺに男に向けられる。


「ところで、君の名前は?」

その問いかけが、突然ぺに男を現実に引き戻した。


「な、名前?」

ぺに男は思わず言葉に詰まる。どう答えればいいのかを一瞬迷う。

だって、転生した直後に、いきなり女体化してるわけだし、「ぺに男」とか言いたくもなかった。


「まぁ、名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」

エクレールは面倒くさそうに言いながら、しかし目は確実にぺに男の反応を楽しんでいるようだった。


ぺに男は肩をすくめて言った。


「うーん、まぁ、しょうがないな。俺の名前は……」

その言葉が出かけた瞬間、イルネスは自分の声が高すぎることに気づき、内心で動揺する。


「ぺに……、イルネスだ!」

完全に焦りながら、何とか名前を告げる。エクレールはその名前を聞いて、ニヤリと笑った。


「イルネスか。まあ、ぺに玉よりはマシだな」

その一言に、イルネスは思わず顔を真っ赤にした。


「なんで、そんな名前で反応してんだよ!」

イルネスは恥ずかしさを抑えるように、声を上げるが、エクレールはまたしても気にする素振りを見せずに、くすくすと笑っていた。


「ふふっ、お嬢ちゃん、君みたいな子が転生するなんて、運命って奴はほんとおもしろいな。」

その言葉にイルネスは完全に我慢できず、エクレールを睨みつけた。


「お前、絶対に何か企んでるだろ……」

そう呟いたイルネスの目の前で、エクレールは満足げな顔をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る