マモリタイ者
カマイタチが、風を吹き起こす。
風は凄まじい切れ味をもちながら、飛来する。
これで依頼人の男を切り裂いたのだろう。
ただ僕はこれを難なく避ける。
すかさず手に持った刀で反撃を行う。
カマイタチは自慢の鎌でこれを受け止めるが、刀が纏う炎によって苦しむ。
カマイタチの鎌は爪である。
身体の一部である爪に炎を浴びせられたら、当然ダメージはあるだろう。
しかしカマイタチも、ただやられるわけじゃない。
もう一方の鎌で僕の右足を切りつける。
ギリギリで反応できたため、切り落とされはしなかったが、血があふれ出る。
僕はカマイタチから離れて、右足に意識を集中させる。
すると右足の出血は止まり傷口はふさがる。
なぜこんなことができるのか。
それこそが僕の超能力『キュウビノキツネ』だ。
この能力により、僕は常人離れした身体能力と回復力をもつ九尾の恩恵を得ることができる。
九尾がどれだけ力を分け与えるかによって、この能力の強さは変わる。
おそらく九尾は力の半分以上を僕に分けているのだろう。
なぜなら九尾の回復が遅い代わりに、僕の回復が早いからだ。
そしてこの能力は九尾の能力をも使うことが可能である。
「狐火」
僕がそう言った途端、カマイタチの足元は燃え上がる。
「グキャァァァァ!!!」
カマイタチが叫びながら僕に突撃する。
先ほどまでは間合いをとるなど工夫をしていたのに身体を燃やされたことにより、怒り狂っているようだ。
突撃するカマイタチの身体を受け流し、腹部を切りつける。
思ったより毛が硬く、切ることはできない。
ただ燃えはする。
「紅蓮」
炎の刀の力を解放し、カマイタチの身体を焼き尽くす。
「グァァァァァァァァ!!!!」
次第に叫びは小さくなり、カマイタチは倒れる。
終わったか…。
「さすがね…。みごとな戦い方よ」
腕を再生させ終わった九尾が僕の側にかけよる。
「ありがと、九尾」
僕は力を分けてくれた九尾にお礼を言う。
「私は何もしてないわ。それはあなたの力よ」
「なるほどね…、そういうことにしておくよ。さて風切は大丈夫だろうか…」
僕が風切に駆け寄ろうとした瞬間、カマイタチが立ち上がり、風切の前に立つ。
「なっ…、こいつまだ…!」
僕が刀を構えると、
「カナコ、マモル…。カナコノタイセツ、マモル…」
突然、カマイタチがしゃべりだしたのだ。
「お前…!しゃべれるのか…!?」
カマイタチは続ける。
「オレ、マモル…。デモマケタ…。カナコ、マモレナカッタ…」
「なるほどね。あなたはその娘を守ろうとしてたのね。」
なら、戦う必要はないのだろう。
僕は能力を解除し、カマイタチに近寄る。
カマイタチはこれ以上、戦う気力がないようだ。
「カマイタチ、安心して。僕は風切に何かしようとか、考えてないよ」
「カナコ、オソワナイノカ…?」
「襲わないよ。それより、風切を守ろうとしたんだろ?ありがとう、僕のクラスメイトを守ってくれて」
おそらくだが、昼間僕を助けてくれたのも、このカマイタチだろう。
その時のこともかねて僕はお礼を言った。
「カナコ、タスカル…。オマエ、イイヤツ」
そう言うとカマイタチは倒れた。
大きさは元に戻り、前足の部分も戻っていた。
カマイタチが倒れると、風切が目を覚ました。
「こ、ここは……?」
「風切、大丈夫か?」
「燃町くん!?なんで!?」
彼女はキョロキョロと周りを見渡し、足元にいるイタチに気づいた。
「そうだ…。私は殴られて…」
「気を失ってたんだよ」
「そうなんだ…。待って!どうして、この子が焦げてるの!?」
「僕が燃やしたんだよ」
「は!?」
僕が結論だけ述べると、九尾に頭をこづかれる。
「過程を言わないと、美弧が動物虐待を行ったことになるわよ」
「美弧!?というか、どなた!?」
「あー、まぁ説明するか。九尾の紹介をかねて」
十分程、僕は状況の説明をすることにした。
「つまり、この子は超常的存在ってこと?」
「そういうこった。とーぜん、信じられないと思うがな」
「え?信じるよ?」
「はぁ!?」
突然、こんなこと言われて信じる?
おかしいだろ、普通。
「だって燃町くんが嘘を言う必要がないじゃん。それに私は燃町くんのこと信じてるからね」
どこでどう信用されたかはわからないが、話がスムーズで助かりはする。
「けど、どうしよう…。この子、怪我がたくさんだし…」
「治せばいいんだろ?」
「そうだけど…、どうやって…?」
「九尾」
「わかったわ」
九尾はイタチに手をかざし、燃やす。
「えぇ!?燃えてるよ!?」
「これでいいんだよ」
「いや、そんなわけ!………傷が…!」
イタチの焦げた毛は元の黒い毛に戻る。
それと同時に、イタチは目を覚ます。
「キー!」
目覚めた途端、イタチは風切に飛びかかる。
「キーキー!」
「あはは、こんなに元気に飛びついて。ホントに超常的存在とは思えないな〜」
風切がそう言うとイタチの動きは止まる。
振り向いて僕の方を見る。
「ん?なんで、僕をみるんだよ。さっきみたいにしゃべれよ」
「え!しゃべるの!?」
風切ご驚く。
イタチは少し気まずそうにしている。
余計だったかな…。
「和奈子って、言ってみて!」
風切は興味満々だ。
イタチは小さく、
「カナコ…」
「ホントにしゃべった!」
とてもうれしそうにする風切。
彼女はこっちのほうがいいみたいだ。
「というか、さっきより発音よくね?」
「…さっきは妖怪変化してたからだよ。普段はこうなんだよ…」
なるほどな、確かにカタコトではなくなっている。
「風切」
「どうしたの、燃町くん?」
「そのイタチ、どうするつもりだ?」
「どうって…、この子の意思で決めることじゃないかな?」
少し悲しそうに風切は言う。
「ボクはカナコと一緒にいたいぞ」
「え…?私と…?」
「イタチがそう言うんだ、それで決まりだな。さっ帰るぞ」
僕は立ち上がり、帰ろうとする。
「え、え…。そ、そんな急に言われても…、も、燃町くん!」
「燃町?そうか、あの人がカナコの大切な…」
「待って!なんで知ってるの!?それ以上言っちゃだめ〜!」
後ろでよくわからないやり取りが起きてるが、気にしない。
いや、一つ気になることがあった。
依頼人の男の死体がなくなっていた。
おそらく、彼はまだ生きているのだろう。
だが、今はどうでもいい。
今日は疲れた。
家に帰ったらはやく寝よう。
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