第2話

狭くて暗く、騒がしい空間。

特に下手でも上手くもない歌が部屋中に響く。



「葵、飲んでるー?」


「飲んでる飲んでる」



俺はいつものサークルのメンバーと忙しい就活の合間を縫ってカラオケに来ていた。

男女6人。


その中には大学でいつもつるんでる理人や、幼馴染の聡子もいた。


みんな酒を飲んだり、手拍子をしたり、雑談をしたりしてそれぞれが楽しんでいた。



「ねぇー葵~」


「んー?」


「いつになったら里香とデートしてくれるのー?」


「いやいやそもそも付き合ってないでしょ俺たち」


「一緒にランチしてくれるだけでいいからー」


「あーそのうちね」


「そのうちっていつ?!葵っていつものそうやって誤魔化すよねー」


「んなことないって」



最近しつこく絡んでくる里香の頭をぽんぽんと叩いてなだめると、里香はほっぺを膨らましてあからさまに不機嫌そうな顔をした。


誤魔化してるんじゃなくて、遠まわしに断ってるだけなんだけど…そんな風に考えながらテーブルの上のポテトをとって口に運ぶと、ポケットに入っていた携帯が鳴った。



「ちょ、ごめん」



そう言って里香の手を払い、携帯を出して確認する。


…メールだ。




「誰からー?」


「んー彼女」


「えー行くの?」


「うん」




俺は携帯をポケットに戻し、上着を羽織り理人と聡子のところへ寄った。



「ごめん。俺帰るわ」


「え、なんでだよ」


「呼び出し。聡子、これ金ね。あとよろしく」


「うん。いってらっしゃい」



不服そうな理人と、笑って送り出してくれた聡子にもう一度謝り、俺はカラオケを出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る