第26話

日和の笑顔が好きだ。



柔らかい口調が好きだ。



年のわりに幼い表情が好きだ。




その気持ち全部をとても伝えきれない。




あと何度道に迷えば日和を幸せにできるんだろう。


今、この瞬間ですらこんな風に思ってしまう。




「ねぇ颯ちゃん」


「ん?」


「幸せにしなくていい」


「…え?」


「幸せにしなくてもいいからそばにいて」


「っ」


「…そばにいてよっ、颯ちゃんっ…」





――あと何度、日和の言葉に救われるんだろう。




一番の不安を、たった一言で取り除いてしまう。

一番ほしい言葉をくれる。




俺だってそうだ。



日和に幸せにしてもらうためにそばにいてほしいんじゃない。





好きだから、


大切に思うから、


一番近くに感じていたいから、


愛してるから…。



っていうか、日和がいれば幸せだから…そばにいてほしいんだ。





「俺…いろんなことに気づくの遅すぎ」


「ふふ、そうだね」


「いっぱい泣かせてごめんね」


「…うん」


「これからはいっぱい笑わせてあげられるよう努力します」


「ん」


「日和のこと、うんと大切にする」


「…んっ」


「大好き」




重ねた唇は冷たくて、それでも柔らかくて、離したくなかった。



どんどん深くなっていくのは、キスだけじゃない。

日和への思いもつもり募っていく。



同時に俺たちの溝は浅くなって、やがて消えた。




優しい時間がゆっくり流れる。


それでもあっという間。




この10年。

あっという間に感じたのは、君がそばにいたからだとやっと気づいた。





うんと大切にします。



うんと可愛がります。





傷つけてしまった分まで、優しくする。


泣かせてしまった分だけ、笑わせる。




だからどうかそばにいてください。




「明日デートしようよ、日和」


「あはは」


「指輪買いに」


「うん、そうだね」





君は世界で一番、大切な人です。









「デート、…しよっか」









end

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幸せにしなくていいから【完】 すりーぷ @mbb2tphorn

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