第16話

「酔ってるせいだっ…」




こんなに泣きそうになるのは全部酔ってるせい。


日和の事をこんなに思い出すのも酔ってるせい。




俺は自由なんだ。

縛られなんかないんだ。


終電で帰ってこなくたって誰も怒らないし、朝帰りしてもいいし、合コンだってしたっていいんだ。



10年間、日和がいることで背負い続けてきたもの、全部全部解き放ったっていいんだ。


女を部屋に連れ込んでもいいし、そのまま押し倒してキスしたって、全然構わないんだ。




いいんだってば。


それでいいんだよ。




「っ…」



もう限界。いろんな意味で。



上手く回らない頭を必死に働かせて、ポケットから部屋の鍵を取り出した。


だけど視界が歪むせいで、上手く鍵穴にさせなかった。



なんで入んないのか、それすら不思議でたまらないと思ってしまう俺は、もう大分やばい。



疲れてんのかな…。




鍵をぎゅっと握りしめて瞳をぎゅっと瞑った。




真っ暗な世界の中で、聞こえたのはすぐ真横にある階段を上る音。


こんな時間に帰ってくる人、他にもいたんだ。



そう思ってゆっくりそっちを向く。




その瞬間、息もできないほど苦しくなるだなんて知らずに。





「なんで…」

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