新しい光

第9話

困った女がいる。



困った…っていうか、どう扱ったらいいかわかんない女。





「あ!お疲れっす秋都さん」


「うわ…」


「テンションくらっ!てか今日こそ家入れてくれますよねー?もう何年待たせれば気が済むんすかー」


「………」



胸下まであるぼさぼさで伸びっぱなしの髪。

黒縁フレームのメガネをかけて、よれよれのTシャツにダメージジーンズという寝巻きのような格好。


いくら私服出勤可能の会社とはいえ、働きにきている人間の姿だろうかこれは。



ディスクの椅子でくるくる回りながらじゃがりこを食ってくるこの女は扱いずらいというか…もうもはや女じゃない。



「家にはいれないし、待たせてもいないんだけど」


「えー?大丈夫ですよ、あたしちゃんと下着の上下は揃えてきましたから」


「なにが大丈夫なのか全然わかんないから」



俺はげんなりため息をついて小さい声で「お疲れ」と告げ会社を出た。



「あ、ちょっと待って!」



そう言って重そうなでっかいカバンを肩にかけて俺の後をついてくるじゃかりこ娘。


てかまじでついてくんな。



「今日はどんな気分すか?生すか焼酎すか日本酒すかそれともあたしすか」


「うざいからついてこないでクダサイ。それに俺酒飲まないし」


「ちっ、こっちがせっかくテンションあげよーと頑張ってんのによーお」


「あげなくていいし、てか怖いから舌打ちやめて」


「ちっ」


「おい」




じゃかりこ娘の本名は笹野倫(ササノリン)。


同い年の同期だけれど、倫は俺に対して敬語を使ってくる。いや…でもこの口の悪さは敬語でもなんでもない。


容姿は適当だし、上司に対しても平気で舌打ちするような性悪女だが、驚くことに仕事だけは誰よりも要領よく行い淡々とこなす。

どっからどう見てもバカにしか見えないのにこれで東大の理学部卒業だというから世界はまだまだ未知数。



いわば変人の天才は紙一重ってことだ。

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