一瞬が宝物(おまけ)

第32話

「ちょっとーなんでいつも私ばっか撮るの!」


そう言って自分の顔を隠す雪路。


約束通り雪路を連れて水族館にきた。

お昼は映画も観たし、なかなか休みが合わないからこういう時間は貴重だとスケジュールを詰め込んだ。


それでも疲れる様子は一切なく、いつもの仕事モードを忘れて水族館で雪路は子供のようにはしゃぐ。



そんな雪路をカメラで撮ったらこれだ。



…そういえば高校の時も、こんな風に雪路が自分のことを撮られるのを嫌がったときがあったな。



多分あれは、高校の卒業遠足。


学年でテーマパークに行って、雪路が友達に無理矢理変なカチューシャつけさせられてて、それが面白くて写真で撮ったら今とまったく同じセリフを言われた。



『ちょっとなんで私撮るの?!他の人撮りなよー』


『やだ』


他の人撮ってどうすんの。


『なんでよ』


『面白いから』


嘘、結構可愛いよそれ。


『もー彼方嫌いー』


俺は好きだけどね。




現像した写真の中に雪路を見つけると、幸せな気持ちになった。


それを自分のものだとストックしておくと気持ち悪いから、雪路にも焼きまわししてあげてたけど、いらないと常に返されていた。



「あ、鮫。見て、彼方」



雪路がいらないと言った写真は、まだちゃんと撮ってるよ。


きっともらっておけばよかったって後悔すると思うよ。

だって結構可愛く映ってるから。


ってゆーか俺の中ではかなり可愛く映ってる。



「彼方ってばー」



でもファインダー越しじゃなくて、


こうして今目の前で楽しそうに笑っている雪路を見ていられることが、本当は一番嬉しい。



人はどうしても写真に思い出を残してしまいがちだ。



でもこうして雪路が俺を呼んでくれる声は耳で、


笑顔は目で、


体温は繋いだ手のひらで、



ちゃんと覚えておこう。




自分自身にちゃんと刻んでおこう。




大事にしたい。


本当に本当に大切だから。




「何?」


「この魚、彼方に似てる」


「は?」




…こんな会話もうちゃんと覚えておこう。






君といる一瞬が宝物だから。

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愛しか、感じない【完】 すりーぷ @mbb2tphorn

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