第7話
――多分、私と付き合ってくれたのだってこういう軽いノリだったんだろう。
「はいそこまでー。雪ちゃん飲み過ぎですー」
「ちょ、なにすんのチャラ男~…」
…4年前のあの頃、私は仕事で毎日のように怒られる日々が続いていて、専門の時から2年付き合っていた彼氏にもフラれたばっかりだった。
「グラス返してー。私は今日とことん飲むんだから~」
「何、どうしたの」
「彼方には関係ありませんー」
怒られる毎日に嫌気がさしていて、本気で仕事を辞めたくて、1人でいるのがたまらなく嫌で仕方がなかった。
1週間前に初めて雑誌に自分の名前が載って、ようやく認めてもらえたかと思っていたのに…。
「アポなしで彼氏の家行ったら知らない女と寝てたなんて彼方には関係ないですー」
「…思いっきり話しちゃってるけど」
「うるさいなあぁーいいからグラス返して」
手を伸ばして彼方から、日本酒の入ったグラスを取り上げようとした。
でも彼方はそれをひょいっと交わす。
私は取り返し損なったその手を床につけて俯いたまま、動けなくなっていた。
「…雪路?」
――“うざいんだよ、お前”
「何が…悪かったのかわからないんだよね...」
「は?」
――“お前いつも仕事のことばっかじゃん”
――“俺のことなんてもう好きじゃないでしょ?”
「…うざいって言われた」
「っ」
「てかもう好きじゃないって…私言ったっけ?」
「………」
…彼は、もともと優しい人ではなかったけれど。
あの人も夢に向かって頑張ってる人だった。
でもちょっと強引で、真っ直ぐなとこに惹かれてた。
私も頑張らなくちゃって、背中を押されてた。
会ったら仕事の愚痴ばっかり言っちゃいそうだし、そんなの一緒にいても楽しくないと思ったから、ちょっと距離を置いたりもしたけれど。
でも…仕事頑張ってる私が好きって言ってくれたじゃない。
だから頑張らなくちゃって。
好きじゃないなんて、言ってないよ。
…好きだったよ。
あなたに嫌われたくなかっただけで、その気持ちが好きの気持ちより上回ってしまったってだけで、いつどこにいたって、好きだった。
――でも、気持ちが溢れてたのは……私だけだったんだ。
「ははっ…もう笑っちゃう」
「雪路…」
「全然うまくいかないの」
「雪…」
「結構頑張ってるんだけどねーっ…」
頬に伝う涙も拭いきれなくて、そんな自分が情けないくらい笑えてきて、私は無理矢理彼方からグラスを奪ってそれを一気に飲み干した。
…昔は好きだったのに飲み過ぎて吐きまくったのがトラウマで、今はあんまり好きじゃない日本酒。
涙とともに流し込むと少しはマシになるかと思ったけど、やっぱりそれは苦かった。
それでも私はそれを飲み干した。
嘘でもいいから、
もう一度、好きだと言ってほしくて。
「じゃあ俺にする?」
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