第2話
真っ白な箱のような場所にごつくて大きなカメラが何台も並ぶ。
これは全部あの人のものだ。
黒のブイネックの袖を捲り上げて、白くて強張った細い腕でそのカメラを構える男性。
この人に撮ってもらいたいと願う女性モデルは一体どれだけいるだろう。
ファインダー越しに覗く鋭くて二重の細い瞳は、きっとモデルだけでなくその先の風景すら見据えている。
彼は自他共に認める、天才カメラマン。
「シャドウの色が服に合ってない。リップの色も赤の方が栄えるし、なにより一番気になるのは髪のボリューム。全然足りねーから」
「つまり…何が言いたいんですか」
「つまり全部やり直せってこと」
「………」
「ドゥーユーアンダースタン?」
…訂正します。
彼は自他共に認める、“鬼畜カメラマン”です。
「俺と一緒に撮影やりたかったらあと10年下積みしてきてください。似非カリスマ美容師様」
「似非ホストの女好きカメラマンに言われたくないんですけどまじで」
「いやそれはあながち間違いじゃない。俺はすべての女性に優しいが、君という人間を女性という枠に入れてあげられなくて大変申し訳ない」
「マジ消えろ」
撮影の空気は最悪。
私とこの似非ホストとのやり取りを少し離れたところから見ているスタッフはもうハラハラ状態だ。
レフ版を持っていたスタッフなんて構えたまま固まっている。
いいよその状態、解いていいから。
この抗争まだ続くから。
「いくら売れっ子カメラマンでも言って良いことと悪いことがあると思うんですけど」
「じゃあこのまま可愛い可愛いモデルさんが100%の輝きを出せずに終わってもいいってことですか」
「ヘアメイクをやったことのないあなたに何がわかるんですか」
「とにかく全部やり直し。こんなんじゃ撮ってもしょうがねぇから」
「ちょ、何言って」
「かいさ~ん」
ごっついカメラを肩にかけて、大きな黒バックを持ちスタジオを出て行く似非ホスト。
スタジオに残された私は怒り爆発だった。
が、それを必死に押さえてスタッフに謝り、モデルさんには更にその倍謝ってその場をなんとか治めた。
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