スウィートサワー
第42話
―――――――……
「えっ?祥馬が二股してたこと知ってたの?」
「うん。だってあいつ溝の口のカフェによく来てたもん。浮気相手と咲交互に連れて」
「うわ…最悪」
クリスマスの夜。
うちにきて2人で作ったワンホールのカシスケーキを頬張りながら、突然千幸さんが思い出したように祥馬のことを話し始めた。
ってことは、千幸さんに祥馬と一緒にいるところ見られてたってこと…?
なにそれ、なんかちょー嫌だ。
「咲さ、ちょー幸せそうな顔してたよね」
「えぇっ?」
「だから尚更ムカついてた。咲のこと騙してるあいつに」
「………」
「咲が顔腫らせて店に来たとき、あいつと別れたんだってすぐわかったよ。もうどうしようもない気持ちになってさ…それでこのケーキ出したんだよね」
いつものように、千幸さんは他人事のようなしゃべり方で自分のことを話す。
私はそんな千幸さんをじーっと見つめていた。
「陸が咲を連れてきた時マジでびびったわ」
くすっと笑う千幸さんを見て、私は自分からキスをした。
「え、何、襲われたいの」
「いいよ」
「はっ?!」
「千幸さん、抱きしめてもいいですか?」
「っ」
私は千幸さんから返事を聞く前にその首に腕を回して優しく抱きしめた。
千幸さんの首筋からはあのシャンプーみたいな香水の香りがする。
本当この香り好きだなと思っていると、突然肩と膝下に千幸さんの腕が回ってきて、気づいたらベッドの上まで運ばれていた。
「ねぇ咲の高校って共学だよね」
「え、そうだけど」
「男子生徒にもそんな笑顔で笑ってんの?」
「はい?」
「だから授業楽しいとか言われてるわけ?」
「ふはっ、何言って…」
「俺も咲の授業受ける」
「あははっ」
ふてくされたように笑い事じゃないと言って、千幸さんは私に覆いかぶさってキスをしてきた。
息もできないようなキス。
苦しくて口を開くと、それを待っていたかのように舌が入り込んできて、更に息ができなくなった。
いつのまにかホックが外されて、体がゆるい感覚に陥ると、千幸さんは優しく笑って私の髪を撫でた。
「キス…甘い」
「甘いっていうか…甘酸っぱい」
「恋だね」
「恋ですね」
「電気消すよ?」
「…ん」
真っ暗になった部屋で、再びキスをした。
甘酸っぱいキス。
愛しさの溢れ出すキス。
吐息の漏れるキス。
たくさん愛して、たくさん抱き合って、こうして重ねていく時間が何よりも愛しい。
――“泣いている人を笑顔にするより、泣きたいのを我慢している人に…ただただ泣いて欲しかったんだ”
あなたがそういう想いを持っていてくれなかったら、今私たちはこんな風になっていなかったかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます