第2話
――気づいたら私は、週に1度は通っているであろう地元の駅の近くにあるカフェにきていた。
あの場所からここまでどうやって歩いてきたのかわからない。
どうやってコーヒーを注文したのかも思い出せない。
そのコーヒーも今目の前のテーブルですっかり冷め切ってしまっている。
甘党の私は、いつもそのコーヒーに大量の砂糖とミルクをいれるけれど、それもまだいれていなかった。
私は友人に叩かれた左頬にずっと手を当てていた。
一体私は何時間こうしていたのだろう。
痛い。腫れているのがわかる。
それぐらいすごい勢いで引っ叩かれたのだ。
私、なんでこんななってるんだっけ。
確か…祥馬の家に昨日の忘れ物を取りに行って、携帯繋がんなかったからおかしいなって思って、ほぼアポなしみたいな感じ。
チャイムを押して、しばらく出てこないから留守なのかなと思って帰ろうとしたらドアが開いて、そこにいたのは祥馬じゃなくて玲菜だった。
「玲菜…?」
不思議に思い首を傾げる。
玲菜は祥馬の元カノで、私は玲菜と別れて落ち込んでいる祥馬を必死に励まして、自然と好きになってしばらくしてから付き合い始めた。
「なんで咲がここにいるの…」
「え、なんでって…」
「咲さ、私と祥馬が付き合ってること知ってるよね?」
「え」
「祥馬のことストーカーみたいに追い回して家まで来て…なんのつもり?」
「ちょ、待っ…私はっ――」
そして走った左頬の、鈍い痛み。
「さいってー…」
ずっとずっとリピートし続ける玲菜の言葉。
左頬から手を離せないまま、何度も何度も頭の中で「嗚呼私は最低なのか、ストーカーだったのか」と反芻し続けた。
祥馬は何も言ってこなかった。
つまりこれは…どういうことだろう。
玲菜と祥馬は本当は別れていなくて、祥馬は私に嘘をついて、私は知らない間に、祥馬と浮気をしていたってこと…?
祥馬は何も言わなかった。
叩かれた私を見て、ぴくりとも動かなかった。
きっと玲菜には一方的に私に迫られていたとでも言ったのだろうか。
つまり…遊びだったのは、私のほうだということだ。
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