宣戦布告ofテスト
私の言葉に彼は目を見開き、すぐに視線を下に落とす。とても礼を言う側とは思えない態度を取ってしまった。でもこれでいい。今言わなければこの極度のお人好しは一生気づかないだろう。
「すまない。君の言う通りだ。僕は一方的に押しつけてきた」
「謝ってほしい訳じゃありません。でもあなたには、人を助けるなって言っても無駄ですよね?
ですのでこれからは受け取って下さい。施した善意のお返しを」
「わかった。ありがとう」
「どういたしまして」
生徒役員という立場上、他人に礼を言われることは多い。でもここまでまっすぐ礼を言われると照れてしまう。この人は本当に他の人達とは違うようだ。
少しだけ重くなった空気を変えようと思いついたことを提案してみた。
「さっきの話ですけれど、テストで勝負をして決めませんか?
私が勝ったら弁当は食べて貰います。
あなたが勝ったら弁当の担当は私のほうが多くしていいですよ。その上で一つ願いを聞ける範囲で聞きます。
ちょうど来週テストがあるので勝負しませんか?」
「なんだか言いくるめられている気がする。僕にデメリットがないんだが?」
ーうっ、バレた。勢いでいけると思ったのにー
「なら君が勝てば僕も一つ言う事を聞くよ」
「お礼にならない気がするんですが?」
「弁当を1日多く作ってきてもらえる時点で随分助かるよ。それに罰ゲームがある方がテストの気合も入るしね」
「わかりました。では合計点勝負でいいですね?」
「ああ問題ない」
こうして弁当を交代で作り、テストの勝負をすることになった。
要らないと言ったのに、私の1日多い分の材料費を払うことを彼は譲りはしなかったが。
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