第9話 誓う戦い ー2ー
「クフフッいいですねぇ!学生という若さでありながら恐怖に立ち向かうという勇気!伸び代を感じます!」
「【強化】!」
「【暗光】!」
ドォンっ!と大きな音が鳴り煙が渦巻く。
(これで少ししか喰らってなかったら絶望…。だが!)
「クフフ!いい!素晴らしい!精度も申し分ない!」
(よしっ!少しも喰らっていないなら必ず『トリック』がある!)
「腕が妙に太いよな…アイツ。」
「明らかにガード硬そうだ。」
「腕以外に入るように殴るしかなさそうだな!」
そう言って俺たちは駆け出す。
「【聖光】!」
天王寺の技とともに。
(馬鹿正直に正面から突っ込むのは悪手!なら!)
「【絶壁】!うぉぉおおおおお!」
「足を引きちぎれ!【暴食】!」
「!」
2人で正面を固めてもらって裏から俺が!
「【暗光】!」
入る!
「実に結構。」
入ると確信した瞬間、俺たちは吹き飛ばされていた。
「ガッ!」
「グッ…!」
「腕がガードの硬い部位だと見抜き正面からのフェイクを入れて裏に切り込む。これも結構。しかしーー。」
まずい。
全身の細胞が際立っている。
「【暴食】…貴様は危険すぎる。」
「「「「!」」」」
暴食が地雷だったか!
「遊ぶにはあまりに危険。危険極まりない。よって、ここで排除しておこう。それと、周りにも一度眠ってもらおうか。恨むなよ。」
来るっ…!
「ぐふっ…。」
「ガハっ…!」
「グッ…!」
「!みんな…!」
くそッ!
何が起こった!
全く見えなかった!
血が出てる。
まずい。視界が…!
「【ち、…治…」
「ああ、回復能力をお持ちでしたか。本当に将来有望ですね。」
「ギッ…!」
「天王寺!」
天王寺が更に蹴りを1発喰らった。
「ゴホッゴホッ…!…ヒューっヒューっ…!」
どうする!
どうすればいい!
俺たちはもう立ち向かってはいけない存在に今相対してる!
俺が囮になっても時間を稼げるかどうかー!
そこで、伊織がポツリと呟いた。
「みんなごめん。俺の能力のせいで。俺がこの能力を持ってなかったら、多分こんなことにはならなかった。だから…。」
待て。何する気だ。
言葉にしようとするが、出てこない。
クソっ、どの部位が破壊されてんだ。血が肺に溜まっている…。
「ちゃんと、責任取るよ。」
そういうと伊織は下を向いて言った。
「…【暴食】。全部、好きにしていいよ。」
その瞬間、周り全てが闇に包まれた。
伊織の身体が黒い何かに包まれる。
「ガァッ…アッ…!」
伊織…!
「これは…!やはり、危険すぎる…!」
そういうと悪魔は伊織に手をかざし、
「【
次の瞬間、黒くなった伊織が真っ二つにされた。しかし、すぐに元通りになる。
「アァ…ア…。」
そして、ただ真っ直ぐに悪魔を見つめる。
「ア…。」
そこからはもう、俺の入れる次元じゃなかった。
目で追うのもやっとの領域だ。
俺は今、理解した。
本当の恐怖とは、何を指すのか。
捕食者とは何を指すのか。
そして、
(まだだ…!)
弱者が唯一勝てる方法を。
◇◆◇
「なっ、小隊が全滅してまだそこに生徒が残っているだと!?」
「は、はい…!俺たちが逃げる時間を稼いでいて…!」
「くそッ!わかった。おい、東雲!て、どこ行った?ああ、くそ!先に行ったのか!あのバカめ!」
隊長が頭を抑える。
「お前でも勝てるかわからんのに…!」
聞いた限りの話では小隊が対抗する間もなくやられたとのこと。
東雲も確かに強いがあまりに危険だ。
「おい!本部に応援要請をしろ!それと今から言う階級以上の隊員は戦闘用意をしろ!」
(頼むから持ち堪えてくれ!)
まだ、夜は明けない。
◇◆◇
伊織が暴食になって沈着状態が少し続いた。
押しているのは明らかに伊織。だが…
『アイツ、もうすぐ体の限界が来るぞ。』
(ああ、わかってる。)
伊織の身体はもう限界だ。
あんな力をいきなり出したら長くは続かない。あんな化け物をも超える力を出してるんだ。当たり前だ。
「グァっァァアア!」
「ぬぅ…!」
最後の踏ん張りとでも言わんばかりの猛攻撃を見せる暴食。
『おい。』
(ああ。)
暴食が、途切れた。
「ア」
伊織が、倒れる。
「ハッ…ハッ…危なかったですね。これがもう1分ほど続いていたら…。」
そこで、俺が足を掴む。
「?なんです?今更あなた程度が何をしようが…。」
ああ、そうだ。
そうだよな、ロキ。
「【暗ッ透】!」
「ガァァァアア!?」
慌てて悪魔が振り払おうとする。
「はな、離せぇ!」
「アアァァアア!」
まだ、離すな!
ここで仕留められなければ俺たちは死ぬ!
「グッ…この…!」
「ぐぁぁぁ!!」
斬撃を喰らいながらもまだ離さない。
まだ。
まだだ。
まだ離すな。
俺がいま仕留めきれなくても教師が間に合えばまだなんとかなる。
(まずい…意識が…。)
「【
(!天王寺!)
そうだ、まだ終わってな…。
「【颪】。」
「ぁ…」
腕が切り落とされた。
「この程度で私が倒せると思いましたか?」
くそッ。
天王寺の治癒で腕は回復しつつあるが間に合わない。
もうどうしようも…。
「悪い。遅くなったな。」
俺の目の前に大きな背中が現れた。
酷く頼もしく見えるその背中は大きく見えた。
そして、
「お前…よくも俺の生徒に手を出したな?」
東雲先生は力強くそう言い放った。
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カエルム つー @TsuOe
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