第3話 朝ごはんと疑問
「お風呂だけじゃなくて朝ごはんまでありがとうございます。それにも服も」
私、麻宮 真衣は魔法少女として怪人と戦い敗北してしまい気を失ってしまい気が付けば見知らぬ部屋で目が覚めるといった新人魔法少女だったとしても中々無い状況になってしまい困惑しています。
しかも、助けてもらっただけではなくお風呂と朝ごはんの世話にもなってしまい、もう…もうどうしましょう…?!
「悪いね、服に関しては俺が着てたやつの中でも小さいやつを引っ張り出したつもりだったんだが、それでも少し大きそうだな」
桐生さんは私の方を見ながら申し訳なさそうにしている。
「いえ、大丈夫です」
男性の服の大きさに驚きながらも感謝を述べる。
「確か君たちが通う魔法少女育成学校は電車で向かえたよな?電車の中で魔法少女の服装のままだとこっちも困るから」
桐生さんは欠伸を噛み殺しながらめんどくさそうに答えている。
「それも…そうですね。私も流石に魔法少女の服装のまま電車に乗る勇気はなかったので助かりました」
私はテーブルに並べられた料理を見ながら答える。
「朝ごはんを頂いていて何なのですが、朝からハンバーグなんですね…重たくないですか?」
「ん?…魔法少女っていうのは怪我が治ったらハンバーグを食べたくなるんじゃないのか?」
キッチンで洗い物をしている男性…桐生 葵さんは不思議そうな顔をしながら返答してくれる。
桐生さんは私が気絶した後、私が負けた怪人から助けてこの部屋まで運んでくれた張本人らしい。
ただ、彼がどういう風に助けてくれたのかを私は深く尋ねてはいない。きっと答えてくれないだろうし、あそこまで好戦的だった怪人が止めを刺さずに立ち去るなんて変だと思う。
だけど何はともあれ助けてもらったのは事実だし、こうやって少し変わっているけど朝ごはんも作ってくれてるし悪い人じゃないと思う。
「そんなことはないと思いますけど、怪我が治った魔法少女がハンバーグを食べたがるって思ったんですか?」
不思議に思ったので尋ねてみる。私自身ハンバーグは好きではあるけど魔法少女が怪我から回復したら食べる物という話は聞いたことはなかった。
「えっと小娘…いや昔住んでいた同居人がそう言ってたんだ」
桐生さんは哀愁の漂う声色で答えてくれる。
「あ…えっと…ごめんなさい。そんなつもりじゃ…」
「構わない、小娘も魔法少女だった。だからそういうこともある」
「強いんですね。私はきっとそんなに受け入れられないと思います…」
「いや…俺も受け入れたわけじゃないよ。今も虚しく小娘との思い出に縋ってるし、忘れ形見を肌身離さず持ってるしね」
そう言って桐生さんは私に左手を見せてくれる。そこには真っ赤な宝石が付いた腕輪が付けられていた。
「それはやっぱり彼女さんから頂いた物なんですか?」
少しデリカシーの無い質問だと思ったが、どうしても気になってしまい聞いてしまった。
桐生さんは一瞬驚いたようで洗い物をしている手を止めて私の顔を見ている。しかしすぐに洗い物に戻ってしまった。
「えっと…その…気になっちゃって聞いてしまったというか…デリカシーが無かったとは思ったのですが、口から出てしまったといいますか…えっと…」
「慌て過ぎじゃない?驚いたのは事実だけど怒ってるわけじゃないよ。」
桐生さんは短いため息をつきながら答えてくれる。
「ただ、なんて返すべきか迷っただけだよ。しいて言うなら、この指輪は別に小娘が用意したものじゃないけど小娘の物ではあるって感じかな」
「え?それって…」
私が喋ろうとしたとき桐生さんは手を叩いて話を遮る。
「さて、お話は終わりだ。早く朝ごはんを食べな?負傷した次の日に報告に行くだけだとしてもあまり遅刻していく場所じゃないだろう学校は」
「それも…そうですね。いただきます」
私は言いかけた言葉を飲み込むように朝ごはん食べるのだった。
「ごちそうさまでした。とても美味しかったです」
お世辞抜きでお店を開けるレベルで美味しいハンバーグでかなり驚いてしまった。
「はは、ありがと。まぁこれしかちゃんと作れないけど口に合ったなら嬉しいよ」
桐生さんは笑いながらお皿を片付けている。
「さて朝ごはんも食べたみたいだし、早いとこ学校に行って用事を終わらせてしまおうか」
「そうですね。やっぱり学校に行くのは嫌ですか?」
私は桐生さんが最初嫌がっていたことを思い出し尋ねてみる。
「まぁ、そもそも魔法少女と関わるのが嫌だからね。だから魔法少女達の学校に行くのも嫌だね」
桐生さんは私の目を見ながら答える。
「それでも行かなかったら押しかけてくる可能性があるなら最初から素直に行った方が面倒事も少なくていいでしょ」
私は、ここまで桐生さんから聞いた話から桐生さんは昔にあった出来事…一緒に暮らしていた魔法少女が亡くなってしまいそこから魔法少女が嫌いになってしまったように感じた。
そこから一つ疑問が生まれてしまった。いや元々あったが今は別の意味で気になってしまったのだ。
「桐生さんはどうして私を助けてくださったのですか?今まで聞いた話だと桐生さんは魔法少女と関わりたくないはずなのに私を助けてくれました。それだけじゃなくてこうやって朝ごはんや服まで…」
疑問に思うと口から出てしまう悪い癖だと思う。
桐生さんは私が喋っている間も目をじっと見つめている。
「それは、お前が小娘に似ていたからだ。見た目がって話じゃなくて本質の話だ」
私の目を見ながら桐生さんはそれだけ言うとキッチンから離れる。
「それじゃあ学校に向かおうか」
「えっと…はい」
私は桐生さんの後に続いて部屋の外に向かう。
桐生さんが言った本質が似ているという言葉に疑問を覚えながら桐生さんと一緒に暮らしていた魔法少女に興味を持つのだった。
訳アリ男性、魔法少女を拾う キツネ油 @age_kitune
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