センズリ入道

後藤いつき

センズリ入道

僕はその、オナニーが好きでね、よくするわけなんですけれども、ある日ね、いつものようにセンズリこいてたらオトンが言うわけですよ、お前な、そうやっていつまでもシコシコやっとるとセンズリ入道に食われてまうぞと。


このオッサンはいい歳こいて何を言うてんねやとムシしてその日はシコシコやってたんですけどね。



そっから何日か経って、バイト帰りにまたシコシコやりながら歩いてるとウチの手前にでっかいこう、なんていうんやろな、モチとクッションの合いの子みたいな、僕のウチは二階建てやねんけれども、それを軽々超えるぐらい馬鹿でかいそいつが道を塞いで鎮座ましましておりまして、こらアカン思うて、でもまあ逆から言ったらウチには入れるんちゃうんかー思うて路地一本回って逆から行ってみたらさっき行ったときはそのモチのオバケのデカさにあっけにとられてよく見てへんかったんけどこう、なんやろな、僕のウチを中心に左右ほぼ二軒分の道がそいつで塞がってもうてんねんな。


こりゃーえらいことになったなとシコシコやってると、そのモチクッションが白いからだ?をウネウネ動かしはじめたんや。でーいよいよどいてくれんのかな思うて見とるとそいつのカラダの上のほうがカパーと開いていってな、真っ黒い空洞みたいな口が現れたんや。で口だけオバケのそいつが辛気臭い声で言ったんや。オナニーやめてくれませんか?って。


でーまぁうすうす思うてたんやけどああやっぱこいつがオトンの言うとったセンズリ入道かと確信して。でもそんなアホみたいなオバケ怖くもなんともないからイヤです。やめません。気持ちええから。ってキッパリ言ってやってん。


そしたらじゃあ悪いけどあなたのこと食わせていただきます。申し訳ありません。


言うとその口がガパァと俺の上に覆い被さってきたんや。


でーあーもう食われる思うとったんやけどそんとき俺はバイト終わってからずっとオナニーしとったもんやからいい加減限界でな。ヤケクソまじりで食らえゆうてピュピューゆうてそいつのでかい口ん中に射精してやったんや。


そいつのブラックホールみたいな口ん中に俺の精液が吸い込まれて見えなくなった途端にそいつ硬直して。


ちょっと間があってボソッとうわまず言うて。ドン引きしとってん。センズリ入道なのに。


萎えるわとか言い出して。センズリ入道なのに。


呆れたオバケやな思うて。思わずお前センズリ入道向いてへんとちゃうんかって言ってしまったんや。


そしたらそいつ、へへ、とかなんか卑屈に笑い出して。背中丸めて。


その姿見てたらなんかムカついてムカついてしょうがなくなって右足でそいつの真っ白いからだに思い切りケリ入れてやったらそのまま俺の体がズブズブ飲み込まれて今なにもないまっしろな空間におる。


ここはどこや。


あいつんカラダの中か。


誰か助けてくれ。


センズリ入道はおる。


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センズリ入道 後藤いつき @gotoitsuki

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