第5話 猫と犬と猛将二人

 猫は可愛い。

 自由だし、何より愛くるしい。


 そして何より一番、煩くない。

 そう、煩くな……


「ラクサ!お手!ヨーシヨシヨシヨーシ!可愛いでちゅね~!はい、オヤツおかわ…」

「さっき一本やっただろう!!何を甘やかしているのだ!全く!!オヤツの上げすぎは良くないと、里親さんが言っていただろうが!」


 すぱーん!!と手にしていた、スリッパでハンニバルの頭をひっぱたくスキピオ。

 事の始まりは、ハンニバルが犬を飼いたいと言い出した事。

 まあ、幸いにもペット可の拠点一軒家を奴が構えていたー(しかも一括キャッシュとか、やっぱりカルタゴ滅ぶべし)ー。なので、偶然とはいえ、地域広報で見た、【里親募集!殺処分を減らす協力を!】の見出しで即。


 可愛いぬこさまワンコがいたので、ジジイ二人が食いついたのです。


 なんということでしょう。

 スキピオは猫派ではありませんか。

 ハンニバルはバッチバッチの犬派ではありませんか。


【里親さん】に別室飼いから徐々に、と言われていたのです。

 勿論最初はお互いにルールを守っていました。

 数日後、ハンニバルの方からトコトコ近づいてきたのです。


「猫ってよくみたら、可愛いいんですよねぇ。はい、マタタビとチュール」


 なっ、なんて奴だ!

 ムツゴロウ・オブ・スマイル全ての動物を包容せし魔性の笑みで近づき、私の「サングトちゃん」にオヤツ賄賂を渡すだと!!?


サグンツム襲撃事件第二次ポエニ戦争の始まりを言ったらなんかザマの戦い始まっていた】をなんか知らない内に「再現」されそうになったので、オヤツの量や時間を全て管理してやった!


 そしたら奴は!奴は!


オヤツがなければ、すればいいのだ!!」


 ああああああ!そうですよねえ!

 ハンニバルよ!奴は!

 我が国ローマに来るときにも!!


「兵士も武器も食料も、なければ調すればいいじゃない!」


 とか絶対言っただろう!絶対!!

 象にのりながら!


 そうじゃないとどうやって、10年あんなトチ狂った長期間もの間、ローマのど真ん中付近で【孤軍奮闘】できるんだよ!?


 てか、マジで記録してたの?リウィウス!!

 記録してるなら「肝心の部分抜けてる」とか、もうね!!

 管理者が馬鹿なの?アホなの?

 あー、ハンニバルはマジで本当に疲れる。


 助けてーーー!!

 クィントゥスローマの盾ー!!

 グラディウスローマの剣ー!!


「スキピオぉー」


 にひー、っと笑うハンニバルの手には【手製のフィレステーキ】。


「待て!ジジイ!それは私の晩ご……!」

「ラクサやあ~今夜は高級炙り肉めっちゃ旨いフィレ肉だぞよぉ~」

「こんの食料強奪糞ジジイ!ふざけんなアアアアアアアア!私の晩御飯を返せえええええ!」


 次の日、私は即効で冷蔵庫をもうひとつ買いに行き、一つは大きいのにした!一つは小さいのにした!奴には小さいのでいいだろう、コンコンと説教したし、少しは懲りるだろう!


 スキピオさんは気づいていませんでした。

 

 ハンニバルさんは【ローマさん】をぶっ倒すローマを孤立させることは、と考えているので冷蔵庫が使えない場合に保存食暗所保存可能の加工品を、買い占めていたのでありました。




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