雪山にて
後藤いつき
雪山にて
せっかくだからスキーしようよと言って簡単にできるものではない。
きみがつまらなそうな顔をしているのはスキーができなかったからではなく、私の言い分の正しさに敗北感を覚えているからだ。私とて別に何もそういうつもりじゃなかった。
なぐさめのつもりで雪玉を転がす。それを見て口をへの字に曲げたままきみも転がす。
このとき何か話していたのだが、何を話していたのか覚えていない。きみは覚えているか?
熱心に転がしていたから、きみのが胴体、私のが頭になる。顔のパーツを探して二人でうろうろする。そして鼻と口のパーツを逆にするかどうかで意見が割れる。でもどっちにしろ大体同じようなかんじになる。おちょぼ口。
きみは帰ってからもずっと、ずっとあの場所に今日作った雪だるまがその姿のまま直立し続けていることを想像してどきどきしている。私も同じことを想像して、同じようにどきどきしていた。
雪山にて 後藤いつき @gotoitsuki
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