ヤギ
後藤いつき
ヤギ
そのまま二月が過ぎ三月四月、桜の葉の青々とした五月のこと、森の闇の中からのそりと一匹真白いヤギが這い出てくる。ヤギは誰にも気づかれぬまま畦道を歩いてやってきて、めえと一声鳴くや子供が出てきて慎重に近づいてがしりと捕らえる。ヤギはびくともしない。びくともしないヤギは子供にとり面白くなくて、ヤギの尻を子供は蹴った。
ヤギの目。
怒っているのか憐れんでいるのか。
そんなような目が少年をとらえて、いや、そんなような目に少年がとらえられて、真昼の空の下、ゆるやかな風が土と緑の匂いを乗せて消えていった。
ヤギ 後藤いつき @gotoitsuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます